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インタビュー

ソフトが決める製品機能、生死を分けるテスト能力コンバージド化するエレクトロニクス製品(2/2 ページ)

エレクトロニクス製品の機能にソフトウェアが占める割合が急速に高まっている。ソフト中心のものづくりだ。こうしたなか、エレクトロニクス関連企業の抱える課題とは何か、どうすれば解決できるのか。米テキサス州オースチンで開催された米ナショナルインスツルメンツ(NI)のテクニカルカンファレンス「NIWeek 2016」の会期中、同社のエクゼクティブ・バイスプレジデントを務めるEric Starkloff氏に聞いた。

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プラットフォームとエコシステムが最重要

――今回のNIWeekではさまざまな事例の紹介の他、NIの新製品が多数登場しました。会期を通じて最も重要なメッセージは何だったのでしょうか。

Starkloff氏 ソフトウェア定義されたプラットフォームとエコシステムだ。この2つが組み合わさることで、パートナーやサードパーティーの製品がきちんと動作する。

 日常使う製品や装置は、日を追って「ソフトウェア中心(software centric)」に変わっている。先ほどの自動車はもちろん、携帯電話、カメラ、飛行機など、枚挙にいとまがない。これらを制御する部品は全てソフトウェアで定義されている。このような製品や装置が意図したとおりに動作するかどうかは、きちんとテストできるかどうかにかかっている。ソフトウェア定義されたプラットフォームが必要な理由だ。ソフトウェア定義されたテストプラットフォームがなければ、検証できない。

――ソフトウェア定義されたプラットフォームを使えば、ムーアの法則の助けを得、加速度的に複雑化するソフトウェアをこれまでよりも短時間で検証できるという内容の講演が今回ありました(スウェーデンSAABの事例)。今後ムーアの法則が「減速」したときにも、NIのプラットフォームは魅力的で有り続けるでしょうか。

Starkloff氏 ムーアの法則のとらえ方には2つあるだろう。1つはシリコンウェハ上のトランジスタの密度が指数関数的に高まっていくというもの。このような進歩には確かに限りがある。現時点で既に100原子の幅しかないトランジスタに到達しているからだ。

 だが重要なのはムーアの法則がなぜこれほどの威力を発揮できたのかということだ。ムーアの法則とはソフトウェアに関する法則だと言うことができる。トランジスタの密度が高まったとしても、そのたびにソフトウェアを書き換えなければならないのであれば、恩恵を受けにくい。逆に言えば、ソフトウェアの互換性が保たれるような進歩があってこそ、ムーアの法則が生きる。

 当社は常にソフトウェアの互換性が保たれるようにプラットフォームを改善してきた。パラレルプログラミングや、FPGAを取り入れたときもそうだ。今後、例えば量子コンピューティングのような技術を取り入れた際にもこの方針は変わらない。このようにして加速度的なソフトウェアの規模拡大に対応できると考えている。

――NIWeekの基調講演の中では米Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Moonshot System」をビッグアナログデータの収集・解析に用いた事例に最も興味を引かれました。HPE Moonshot Sytemの処理能力があれば、今後10年間、どのようなIoTにも対応できるのでしょうか。

Starkloff氏 HPEはIT業界のリーダーであり、当社が持たないさまざまな技術を当社の顧客に提供できる。汎用サーバで使われる「Intel Xeon」を64コア搭載し、高い処理性能を持つ。当社の「CompactRIO」やFPGA上で動作するプログラムを変更しなくても導入でき、工場の現場に設置できることがユーザーのメリットになるだろう。セキュリティやマネージャビリティを高めやすく、工場内の全機器の稼働状況をリモートで監視することができる。分散システム構築に向く。

 だが、当社にない技術を持つ企業は多い。当社と協力関係にある企業でいえば、ネットワーク技術に強みがあるCisco Systemsや、クラウドベースの分析ソフトウェアを持つPTC、データ分析に優れるIBMなどだ。

 今後も協力関係を持つ企業が登場する。なぜなら、当社はITとOT(Operational Technology:産業機器の制御技術)の融合に現在取り組んでおり、分散型のデータ収録システムとITシステムを結び付けようとしているからだ。

――最後に2016年の「チャレンジ」を教えてください。

Starkloff氏 これは長いリストが必要だ。だが、先頭に来るのは、ユーザー企業が持つテストデータの価値を引き出すこと、より広範な監視が可能になるようにすること、産業機器の稼働率を高める手助けをすることだ。当社だけでは全てをかなえることができないため、他社と協力関係を結んで当社のユーザーにエコシステムを提供していきたい。

【修正履歴】初出時にNIWeekの開催場所をヒューストンとしておりましたが、正しくはオースチンです。お詫びして訂正いたします(2016/09/06)。

取材協力:ナショナルインスツルメンツ】

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