ポケットサイズのPLCでインダストリー4.0を加速:マキシムがレファレンスキットを発表(2/2 ページ)
Maxim Integrated Products(マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ)が発表したPLC(プログラマブルロジックコントローラー)開発プラットフォーム「Pocket IO」は、ポケットに入ってしまうほど小型な点が特長の1つだ。従来品の「Micro PLC」に比べてサイズは5分の2になっている。消費電力は30%低減された。
小型化、低消費電力化は今後も続く
Pocket IOではこの他、DC-DCコンバーターの小型化や、デジタルアイソレーターの低消費電力化なども実現されている。Pocket IOに搭載されるDC-DCコンバーター「MAX17681」は、従来品と比較して約30%以上消費電力が低減していて、電力効率は90%以上の電力効率を実現している。
Shieh氏は、PLCは今後も小型化と低消費電力化の傾向は続くとみている。「小型化の手段の手段としては、ICの集積度を高める、新しい製造プロセスとパッケージング技術を採用する、などが考えられる。パッケージングでは、以前はスマートフォン向けICを中心に採用されていたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)が、産業用ICでも使われるようになっている。WLCSPはチップの大きさがそのままパッケージの大きさでもあるので、小型化に貢献する」(同氏)
Maximはここ数年、自動車と産業機器の2つの分野に注力している。Shieh氏によれば、産業機器向けには2012年以降、1000に近い品種を発表していて、FA向け製品の年間売上高はMaximの全体の年間売上高の20%近くを占めているという。同氏はPocket IOについて「Maximのアナログ技術、プロセス技術を集約したものだ」と強調した。
インダストリー4.0でリショアリングが進む?
Shieh氏は、長期的には、インダストリー4.0によって製造業のリショアリング(海外に移管した拠点を国内に戻すこと)が促進されると述べた。
同氏はリショアリングを促す要因として主に3つを紹介した。まずは、インダストリー4.0だ。「生産工場のオートメーションによってコストは下がる。一方で、(これまで多くのメーカーが製造拠点を構えていた)中国では人件費の高騰が続いている。つまり、国内での製造コストと海外での製造コストの差が小さくなってきている。リショアリングは妥当だ」(Shieh氏)
2つ目は、エンドカスタマーに近い所に製造拠点を構える方が、サプライチェーンをコントロールしやすいという理由からだ。顧客の要望の変化にすぐに対応できる。3つ目は、品質の維持である。Shieh氏は「中国では離職率が高いので、せっかく作業や技術を覚えても辞めてしまう。そのため、製品の品質を維持することが難しくなっている」と説明した。
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