内蔵した加速度センサーの個体差からIDを生成:1000兆分の1の精度で識別可能
KDDI総合研究所は、ウェアラブル機器に内蔵された加速度センサーの個体差から固有IDを生成する技術を開発した。同種類のセンサーから、1000兆個以上の異なるID生成が可能だという。
IoT端末機、認証や決済ツールとして利用可能に
KDDI総合研究所は2016年10月、ウェアラブル機器に内蔵された加速度センサーの個体差から、固有IDを生成する技術を開発したと発表した。1000兆分の1以上の高い精度で識別が可能だという。
KDDI総合研究所が新たに開発した技術は、ウェアラブル端末などに搭載されている加速度センサーを活用する。加速度センサーは、X軸やY軸、Z軸などの最大値や最小値といった特性が個体によって、それぞれ微妙に異なるという。こうした個体差を利用して、複製が困難な端末機固有のIDを生成するソフトウェア技術である。このような技術を開発したのは「世界でも初めて」と主張する。
具体的には、加速度センサーが内蔵された端末機に、開発したソフトウェアをインストールする。そうすると、加速度センサーの最大値、最小値から抽出した特微量に対して、誤り訂正技術および暗号技術による処理を行い、固有端末のIDを生成する仕組みだ。
新技術は、1000兆分の1以上の高い精度で端末識別IDを生成することが可能である。このことは、同種類のセンサーから1000兆個以上の異なるID生成が可能であることを示している。また、同一端末機でID生成を1万回繰り返し行っても、同一IDが生成される。その上、耐環境性にも優れている。90℃の高温、−18℃の低温および高度2000mの低気圧環境でも同じIDが生成できることを確認している。
開発した技術はソフトウェアのみで対応しており、演算処理能力に制限のあるIoT端末でも利用しやすい。メモリ上に端末識別IDを生成して保存すれば、メモリ保護機能によって、高い安全性を確保することができる。
IoT端末機の識別機能は、SIMカードや専用のセキュリティチップなど、内蔵されたハードウェアで行うのが一般的であった。今回の技術を用いると、これらのハードウェアが実装されていない小型のIoT端末機でも、認証や決済を安全に行うための識別機能を容易に実装することが可能となる。
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