カネカ、太陽電池モジュールで変換効率24.37%達成:セルの記録達成に続いて
カネカは、結晶シリコン太陽電池モジュールで「世界最高」となる変換効率24.37%を達成したと発表した。2020年の14円/kWhという発電コスト目標の達成に向けて大きく前進したという。
「世界最高」
カネカは2016年10月28日、結晶シリコン太陽電池モジュールで「世界最高」となる変換効率24.37%を達成したと発表した。太陽電池は、一般的に複数の太陽電池セルを接続し、強化ガラスなどで表面を保護した太陽電池モジュールに組み立てて使用する。
同社は、結晶シリコン太陽電池(ヘテロ接合バックコンタクト型)セルを108枚活用し、モジュール内での抵抗損失を最小限にするためのセル間配線技術や、モジュールに照射された光の収集効率を高める技術を新たに開発。これにより、結晶シリコン太陽電池モジュールで、変換効率24.37%(モジュール面積13.177cm2)を実現したという。
今回の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトにより実現した。これまでにも、2016年9月に結晶シリコン太陽電池(ヘテロ接合バックコンタクト型)セルで、変換効率26.33%を実用サイズ(80cm2)で達成したことが発表されている。
カネカとNEDOは、「太陽光発電開発戦略」で掲げる発電コスト目標(2020年に14円/kWh)実現の目安の1つである変換効率22%を、世界で最も普及している結晶シリコン太陽電池モジュールで上回ったことで、目標達成に向けて大きく前進したとしている。
カネカは今後、今回の成果を生かした高効率太陽電池の実用化に向けて開発を進めていく。なお、今回の成果は、2016年10月31日〜11月1日にワークピア横浜で開催される「平成28年度NEDO新エネルギー成果報告会」において発表されるようだ。
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