Intel、ARM経営幹部をIoT部門トップに任命:x86への固執から脱却?
Intelが、同社のIoT(モノのインターネット)部門のトップにARMの元経営幹部を任命した。他にも自動車事業グループのトップにDelphi Electronics & Safetyの人物を任命するなど、IntelはIoTおよび車載事業を強化する上で戦略的な人事を行っている。
ARMから人材を引き抜いたIntel
Intelにとって、IoT(モノのインターネット)と自動車という2つの最新市場において成功を収めるためには、フレッシュな人材を確保し、何らかの組織再編を行うことが重要になるだろう。これらの新市場は、PC事業への依存度を下げたいと考える同社にとって、成長をけん引していく要素となる。
Intelは2016年11月29日(米国時間)、同社のIoTグループから、新たに自動車担当チームを独立させることを明らかにした。IntelのIoT/自動車担当チームはこれまで、IoTという1つの大きなグループの中にまとめられていた。
今回の動きから、Intelが、「これらの2つのチームは今後、フルスピードで成長を遂げ、それぞれ独立して管理される事業部門として責任を果たすことができる」との確信を高めていることが分かる。
Intelは今回、組織変更を行っただけでなく、かつてARMで経営幹部を務めていたTom Lantzsch氏をIoT部門のトップとして招き入れた。同氏は、IoTグループ担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーに就任し、経営幹部として指揮を執っていくという。
同氏は、今回Intelに迎え入れられる以前は、ARMの戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めていた。
Intelは引き続き、ARMコアに依存せずにIoT市場を追求していく考えだが、最大のライバル企業であるARMから迎えた経営幹部が内部組織を率いることから、今後は新たな道を進んでいくかもしれない。この先、何が起きるのか分からない状況にある。
x86への固執から脱却?
市場では既に、変化の兆しが見え始めている。
Intelは、これまで数十年間にわたり、自社のx86アーキテクチャをベースとしたチップに固執してきた。しかし、同社は2016年10月に、最新のFPGA「Stratix 10」に64ビットのARMプロセッサを搭載する予定であることを明らかにした。「Xeon」サーバチップに、AlteraのFPGAを集積するという。1つのチップ上に、x86とARM CPUを集積する可能性もある。Intelは既に、マルチチップ回路基板上にXeonとAlteraのFPGAを搭載しているという。
もちろんこのような動きは、サーバ側でも起こっている。実際のところサーバは、ARMベースのモバイル機器やIoT機器から送信される情報を受けて、データ分析や画像認識、自然言語処理などのタスクを実行する。Intelのx86チップは、サーバ市場で優勢を確立している。
Lantzsch氏の就任によって、IntelのIoT戦略に新たな風が吹き込むことになるのか、今のところはまだ分からない。しかし、IoTグループのトップに同氏を選んだという事実から、Intelが少なくとも、x86以降の進むべき道について真剣に考えているということが分かる。
また、Intelの自動車チーム「Automated Driving Group(ADG)」のトップには、Doug Davis氏とKathy Winter氏の2人が就任する。ADGは、IntelのCEOであるBrian Krzanich氏に直属するという。
Davis氏はこれまで、IntelのIoT Group担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めていた。ADGでは、シニアバイスプレジデント兼戦略リーダーを務めるという。一方のWinter氏は、2016年8月にIntelに入社する前は、Delphi Electronics & Safetyでソフトウェア/サービス/自動運転のバイスプレジデントを務めていた。Winter氏の雇用から、自動車事業に対するIntelの本気度が伺えるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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