策定完了で本格発進、NB-IoTに期待するHuawei:MBBフォーラムを日本で初開催(2/2 ページ)
ファーウェイ(Huawei)は2016年11月、プライベートイベント「第7回グローバル・モバイル・ブロードバンド・フォーラム(MBBフォーラム)」を開催し、同社が注力する技術などを展示した。今回、大きなテーマの1つとして取り上げたのがNB(Narrow-Band)-IoTだ。同社でワイヤレス・マーケティング・オペレーション担当プレジデントを務める邱恒(キュウ・コウ)氏は、標準化されているNB-IoTによって、IoT(モノのインターネット)分野のエコシステムの拡大と強化を図ることができると語る。
NB-IoTは普及しやすい
キュウ氏は「もちろん、どのネットワーク技術が最も優れているかという話ではない。それぞれの技術に合ったシナリオ(ユースケース)がある」と前置きした上で、NB-IoTは、3GPPにより標準化されていること、既存の基地局を使えること、(セルラーIoTの中でも)低消費電力なこと、といった理由から、普及しやすい素地を持っていることを示唆した。
ファーウェイは既に、基地局向けにNB-IoT対応のソフトウェアを準備している。キュウ氏によれば、「当社の基地局を使っているオペレーターは、ソフトウェアをアップグレードすればNB-IoTを使えるようになっている」という。さらにファーウェイは、NB-IoT対応のチップセットも用意している。
キュウ氏は「もう1つ、われわれはパートナー各社と共同で、NB-IoTに向けたさまざまなユースケースを開発している」と述べる。技術があってもユースケースがなければ、その技術は普及しないからだ。
7つの分野のユースケース
同氏はファーウェイが考えているユースケースについて、「3つのA、2つのE、2つのMから成る7つの分野」を挙げた。3つのAとは「Automotive(自動車)」「Asset Tracking(資産トラッキング)」「Agricultre(農業)」、2つのEは「Energy(エネルギー)」と「Environment(環境)」、2つのMは「Metering(スマートメーター)」と「Municipal(都市行政)」を指す。
キュウ氏が特に有力なユースケースとして挙げるのが、スマートパーキングだ。ファーウェイが2016年11月に発表した「Smart Transportation」のレポートには
- 米国ロサンゼルスでは、道路渋滞の8〜74%が、駐車場を探してぐるぐる走り回っているクルマによって引き起こされている
- 米国ニューヨーク・マンハッタンの15ブロック内のエリアでは、駐車場を探し回る自動車によって年間12万9561米ドル相当の燃料費が無駄に使用されている
- 同じくマンハッタンでは、駐車場を探し回る自動車によって年間325トンもの二酸化炭素が排出されている
という調査結果が報告されている(参考「Huawei Smart Transportation」)。スマートパーキングを導入すれば、こうした問題の緩和が大いに期待できる。
今回のMBBフォーラムでは、ソフトバンクがNB-IoTを使用したスマートパーキングシステムのデモを披露した(関連記事:ソフトバンクがNB-IoTの屋外デモ、「国内初」)。屋外でNB-IoTのデモを行ったのはソフトバンクが「国内初」(同社)としている。ソフトバンクは、NB-IoTの他、同じセルラーIoTである「LTE-Cat 1」「LTE-Cat M」を、2017年夏から順次、全国に展開していく予定だ。
スマート農業やスマートメーターも、NB-IoTに極めて適したユースケースだと、キュウ氏は説明する。「温湿度センサーなどをビニールハウスや土の中に取り付けることで、より細かく環境をモニタリングできる。それによって収穫高が上がるというデータがある。スマートメーターについては、特に国土が広い国での需要が高い」(同氏)
2020年までに21億個がLPWAにつながる
キュウ氏は、NB-IoTの課題について「技術的な課題はほとんどクリアされているが、アプリケーションの開発に時間がかかるだろう。とにかく数が多いからだ。先ほど、ファーウェイが考えている7つの分野を挙げたが、それだけでも業界が多岐にわたっていて、(ネットワークやデバイスに対する)要件はさまざまだ。こうした要件に応えられるようにアプリケーションを開発していくのは、時間も体力も必要だろう」と述べている。
NB-IoTの浸透は、今後どのくらいで進んでいくのか。これについてキュウ氏は、「全世界でセルラーに接続されるIoTデバイスは、2020年までに30億個に上るとみられている。そのうち70%、つまり21億個がLPWAネットワーク(NB-IoTに限らず)に接続されるようになると考えている」との見解を述べた。
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