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時をかける人工知能 〜たった1つの数値で結果から原因に遡るOver the AI ―― AIの向こう側に(6)(11/11 ページ)

「ベイジアンネットワーク」は、私が最も使い倒している人工知能技術の1つです。ある事柄について、たった1つしか信頼に値する数字がなくても、「現在の結果」から「過去の原因」を、遡(さかのぼ)って推測できる。そんな技術なのです。

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2017年、私たちは“人工知能”の夢から覚め始める!?

 この連載では、これまで何度も繰り返しており、そしてこれからも何度も繰り返して申し上げていくつもりですが ―― "人工知能"という技術は存在しません(「我々が求めるAIとは、碁を打ち、猫の写真を探すものではない」)。

 私たちの社会には"人工知能"というコンセプトがあり、そのコンセプトを支える"人工知能技術"だけが存在し、その技術を使いこなすためには、"人工知能技術"を利用する技術を習得した人間が、必ず必要となるのです。

 来年(2017年)は、私たちが、"人工知能"の夢から覚め始める年になる ―― 私は、そんな漠然とした予感を持っています。

 そして、『夢から覚めた時に、私たちが"人工知能技術"を使いこなせる立ち位置に立っていられるかどうかは、私たち次第である』と私は思っているのです。

(謝辞)

今回の分析では、NTTデータ数理システムのベイジアンネットワーク構築支援システム「BAYONET」(http://www.msi.co.jp/bayonet/)を利用させていただきました。


⇒「Over the AI ――AIの向こう側に」⇒連載バックナンバー

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Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。


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