高周波電力変換用ブロックコア、日立金属が開発:大容量変圧器の小型化を可能に
日立金属は、ナノ結晶軟磁性材料「ファインメット」および、アモルファス合金「Metglas」を用いて、100kW超級高周波電力変換用のブロックコアを開発した。高周波領域の変圧器において、より小型軽量化と電力変圧の高効率化を可能とする。
ナノ結晶軟磁性材料とアモルファス合金を使用
日立金属は2017年1月、ナノ結晶軟磁性材料「ファインメット」および、アモルファス合金「Metglas」を用いて、100kWを超える高周波電力変換用のブロックコアを開発したと発表した。高周波領域の変圧器において、より小型軽量化と電力変圧の高効率化を可能とする。
新たに開発したのは、ファインメットブロックコア「F3BC」シリーズとアモルファスブロックコア「AMBC」シリーズ。ファインメットは特に5〜20kHzといった高周波駆動における変圧器用コアとして、アモルファスは高周波リップルを含むリアクトルのコア材に、それぞれ適している。
これらの材料は、電磁鋼板に比べ鉄損が極めて小さく、より高周波での駆動が可能になるという特長を持つ。同社はこれまで、ファインメットとアモルファスを用いたUU型カットコアを供給してきた。新たに今回、ブロックコアを開発したことで、高周波領域の変圧器において、さらなる小型軽量化と、電力変圧の高効率化が可能になるという。
F3BCシリーズは口型とすることで、大型コアを組み立てることができ、小型の100kW超級トランスを実現することができる。AMBCシリーズは、大型のマルチギャップコアを組み立てることができ、フリンジング磁束によって鉄損の軽減や発熱を抑制することが可能となる。
同社は当初、標準型ブロックコアのサンプル出荷を2017年1月より始め、2017年度後半から量産を開始する。今後は、顧客の要求に基づいたコアの形状についても対応していく予定である。
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