IoTの通信方式は適材適所へ マルチプロトコルの現状:シリコンラボに聞く(2/2 ページ)
IoT時代の通信方式は適材適所で選ぶのが良い――。Silicon LaboratoriesがIoT時代の通信方式として提案するのは“マルチプロトコルソリューション”である。同社日本法人でIoTスペシャリストを務める水谷章成氏に、マルチプロトコルの5つの定義とその現状、課題について聞いた。
2017年中にダイナミックまでサポート
多くの人がマルチプロトコルと聞いて想定するのが、4つ目のダイナミックとする。各プロトコルが一定間隔でネットワークをシェアする形となる。切り替えを行うタスクを動作させるだけのため、「マイクロ秒級」(水谷氏)と瞬時に切り替えが可能だ。顧客が開発しやすいよう、各プロトコルの動作をどうプログラミングするかが今後の課題となる。
5つ目の同時動作は、同時に動作しているようドライバに値するソフトウェアで切り替え処理を行うことで、エンドユーザーが通信方式の切り替え操作を行うことなく、それぞれの通信を行えるようにする。Bluetoothなど時間の管理を厳しく行わなければ接続エラーとなるプロトコルでは難しく、時間的制約が比較的緩いZigBeeとThreadネットワークに継続して参加する方法を現在検討しているという。
Wireless Geckoでは現在、プログラマブルまでサポート。2017年3月までにはスイッチング、2017年中にはダイナミックまでをサポートする予定としている。
水谷氏は「一番重要なのはハードウェアが共通で、プログラムだけ書き変えればいい状態である。通信用チップが組み込まれている強力なプロセッサではなく、低消費電力のマイコンを搭載したSoCでマルチプロトコルを行えるのが当社の強み」と語る。
レファレンスデザインも提供
同社は、Wireless Geckoポートフォリオの1つである「Mighty Gecko」を用いた、ビルディングオートメーション向けのレファレンスデザインも提供している。静電タッチ型 調光スイッチと磁気コンタクトセンサーに加えて、2016年12月には人感センサーとスマートコンセントも追加した。照明機器向けのレファレンスデザインや、ZigBeeやThreadに対応したゲートウェイなども展開。システム構成やデバッグ、ソフトウェア開発キット(SDK)は、同社が無償で提供するツール「Simplicity Studio」でサポートする。「IoTアプリケーションの開発期間を短縮化することが可能」(水谷氏)と語る。
水谷氏によると、同社のZigBeeメッシュネットワークを用いた照明ソリューションは、これまでラスベガスのAria HotelやIKEAで採用されてきた。マルチプロトコルに関しては「このようなコンセプトが欲しかった」と関心を示す顧客は多いが、どのように活用できるのか未知な部分もまだ多い。普及に関しては「これから」(水谷氏)と語る。
「マルチプロトコルのシナリオタイプでいうダイナミックのように、エンドユーザー視点では同時動作として扱えるほど複数の無線が高速切り替え可能になると、それぞれの無線の長所を最大限生かした新たなユーザー体験に結び付けられるかもしれない。例えば、Bluetoothの一般的なビーコンでは双方向通信ができず、ネットワークには接続されていない。マルチプロトコルによって、ネットワーク接続とビーコン動作を同時に実現することで、ビーコンの管理や、発する情報により多くの表現力を与えることが可能だ。マルチプロトコルは、未知なる可能性を広げる技術といえるだろう」(水谷氏)
今後は、Wireless GeckoでSIGFOXなどのプロトコルにも対応させる予定としており、マルチプロトコルソリューションによる新たなユーザー体験の訴求を狙うとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 5Gの加入契約数、2022年には5億5000万件に
Ericsson(エリクソン)は年に2回、モバイル市場の動向をまとめた「エリクソン・モビリティレポート」を発行している。同レポートの最新版(2016年11月発行)によると、5Gの加入契約数は、2022年には5億5000万件に達する見込みだという。レポートでは5Gの他、V2X(Vehicle to Everything)やセルラーIoT(モノのインターネット)ネットワークについてもカバーしている。 - Intelが5Gモデムを発表、モバイルでの返り咲き狙う
Intelは「CES 2017」で5G(第5世代移動通信)モデムを発表した。2017年後半にもサンプル出荷を開始する予定だという。 - 802.11axの策定が進む、CES 2017で対応チップも?
Wi-FiとLTEの“いいとこ取り”をしたような次世代Wi-Fi規格「IEEE 802.11ax」の規格策定が進んでいる。現在ラスベガスで開催されている「CES 2017」では、802.11axに対応したチップやアクセスポイントが展示されるとみれている。 - 策定完了で本格発進、NB-IoTに期待するHuawei
ファーウェイ(Huawei)は2016年11月、プライベートイベント「第7回グローバル・モバイル・ブロードバンド・フォーラム(MBBフォーラム)」を開催し、同社が注力する技術などを展示した。今回、大きなテーマの1つとして取り上げたのがNB(Narrow-Band)-IoTだ。同社でワイヤレス・マーケティング・オペレーション担当プレジデントを務める邱恒(キュウ・コウ)氏は、標準化されているNB-IoTによって、IoT(モノのインターネット)分野のエコシステムの拡大と強化を図ることができると語る。 - Sigfox日本仕様の認証取得 ―― TIの開発キット
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、さまざまなセンサー技術や制御技術、通信技術を核にIoT(モノのインターネット)事業を展開していく。新たに発表したSub-1GHzワイヤレスマイコン開発キット「CC1310LaunchPad」は、業界で初めてIoTネットワーク「Sigfox」日本仕様(RCZ 3)の認証を取得した製品となる。 - “よく飛ぶ”無線モジュール、見通しで7km以上
インタープランは、「Embedded Technology 2016」「IoT Technology 2016」(2016年11月16〜18日/パシフィコ横浜)で、組み込み用無線モジュール「IM920」を展示した。同製品は920MHz帯の独自プロトコルで無線通信を行い、通信距離7km以上を実現するという。