次世代無線LAN(IEEE 802.11ax)にも対応
東芝は2017年2月、世界最高レベルの電力効率を実現したA-D変換器を開発したと発表した。次世代無線LAN(IEEE 802.11ax)など高速化する無線通信への対応と、端末機器の長時間稼働を可能とする。
次世代無線LAN向けA-D変換器では、高い変換精度と電力効率を両立することが求められている。東芝は今回、消費電力を抑えつつ、A-D変換器の倍率精度を向上させるためのデジタルアンプ技術を開発した。
新たに開発した増幅器は、回路内に比較器を追加している。仮想接地電圧を検知して、ゼロに近づくよう増幅器出力を制御することで倍率精度を高めた。この結果、次世代無線LAN向けA-D変換器に求められる変換精度を、これまでの3倍以上となる電力効率で実現できたという。
増幅器に内蔵されたデジタルアンプの大半はデジタル回路で構成されている。デジタル回路は、切り替え時のみ電流を流せば済む。これまでのアナログ回路のようにオペアンプは必要がないため、消費電力を抑えることが可能となる。また、CMOSの微細化を進めることで、性能は向上し実装コストも低減できるという。
今回の開発成果は、米国サンフランシスコで開催された半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC 2017」で、現地時間2017年2月8日にその詳細を発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CMOSイメージセンサーにDRAMを積層
ソニーは、DRAMを積層した3層構造の積層型CMOSイメージセンサーを開発した。高速読み出しを実現したことで、スマートフォンでもスーパースローモーション動画の撮影などが可能となる。 - 105Gビット/秒のテラヘルツ送信機を共同開発
広島大学と情報通信研究機構(NICT)、パナソニックは、シリコンCMOS集積回路を用いて、300GHz帯単一チャネルの伝送速度として105Gビット/秒を実現したテラヘルツ送信機を共同開発した。光ファイバーに匹敵する高速無線通信を可能にする。 - EVモーター制御の専用回路を開発、CPU負荷軽減
ルネサス エレクトロニクスは、車載用マイコン向けのモーター制御専用回路技術「IMTS(Intelligent Motor Timer System)」を開発した。フィールド指向制御演算の処理を高速で実行し、CPUの負荷も大幅に軽減することができる。 - 512Gbの64層3D NANDを試験生産――四日市工場で
ウエスタンデジタルは2017年2月、64層構造の3D NAND型フラッシュメモリ(BiCS3)で容量が512Gビットの製品を開発し、三重県の四日市工場で試験生産を始めたと発表した。 - 東芝、半導体事業の分社化を検討
東芝は2017年1月18日、半導体事業の分社化を検討していることを明らかにした。 - 東芝、深層学習を低消費電力で実現する半導体回路
東芝は2016年11月、ディープラーニング(深層学習)の処理を低い消費電力で実行する“人間の脳を模した”半導体回路「TDNN(Time Domain Neural Network)」を開発したと発表した。