105Gビット/秒のテラヘルツ送信機を共同開発:広島大などがISSCCで発表
広島大学と情報通信研究機構(NICT)、パナソニックは、シリコンCMOS集積回路を用いて、300GHz帯単一チャネルの伝送速度として105Gビット/秒を実現したテラヘルツ送信機を共同開発した。光ファイバーに匹敵する高速無線通信を可能にする。
光ファイバーに匹敵する高速無線通信が可能に
広島大学と情報通信研究機構(NICT)、パナソニックは2017年2月、シリコンCMOS集積回路を用いた「テラヘルツ送信機」を共同開発したと発表した。300GHz帯単一チャンネルの伝送速度として105Gビット/秒を実現している。光ファイバーに匹敵する高速無線通信を可能にする技術である。
3者による研究グループは、300GHz帯で直交振幅変調(QAM)を用いることにより、CMOS無線送信器の通信速度が大幅に向上することを実証し、前回の「ISSCC 2016」でその研究成果を発表した。そして今回は、チャンネルあたりの通信速度を、これまでの6倍に高める技術を新たに開発した。これによって、290GHz〜315GHzの周波数帯域で、1チャンネルあたり100Gビット/秒を上回る通信速度を達成することができた。
今回開発した100Gビット/秒の通信速度は、現行のスマートフォンに比べて100〜1000倍も高速であり、DVD1枚に記録された情報を、わずか0.5秒程度で伝送することが可能となる。光ファイバーに匹敵する通信性能を実現したことで、通信衛星や飛行機との高速無線通信が可能となる。特に、通信速度に加えてリアルタイム応答が要求される用途に有用だという。
なお、詳細な研究成果については、ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2017(2017年2月5〜9日、米国・サンフランシスコ)で発表する。同時に伝送実験のデモンストレーションも会場で行う。
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