感度波長域をフレーム単位で同時に変えられる技術:パナがISSCC 2017で発表
パナソニックは、イメージセンサーの同一画素内で、近赤外線域の感度を電気的に変えることが可能な電子制御技術を開発した。可視光、赤外線域での撮像をフレーム単位で切り替え可能という。
イメージセンサーの小型化や堅牢性向上へ
パナソニックは2017年2月、イメージセンサーの同一画素内で、近赤外線域の感度を電気的に変えることが可能な電子制御技術を開発したと発表した。同社の独自の積層型構造を有する有機薄膜を用い、この積層型有機薄膜へ加える電圧を変えることにより、イメージセンサーの感度波長域を全画素同時に電子制御できる技術である。これにより、可視光、赤外線域での撮像をフレーム単位で切り替え可能という。
従来のカメラで可視域撮像と近赤外線域撮像を行う場合、可動式の赤外線カットフィルターをセンサー前面に設け、可視光域での撮像時には赤外線カットフィルターを挿入して、センサーへ入る赤外線を遮断する必要がある。しかし、可動部品による撮像波長の変更はカメラの大型化を招き、耐久性や切り替え速度にも課題があった。
同社はこの課題に対して、可視光域と近赤外線域に感度を有するそれぞれの有機薄膜を設けて直接積層した。この積層型有機薄膜に電圧を加えることで、波長感度の異なるそれぞれの有機薄膜に加わる電圧を、抵抗比に応じて変化させる構造としている。加えた電圧が、積層したそれぞれの有機薄膜に、抵抗比に応じて分配される形となる。
このような独自設計に基づく構造により、「可視光域のみに感度を有する状態(図1の左)と、可視光域から近赤外線域に感度を有する状態(図1の右)を、一組の電極で電気的に切り替えることが可能になる」(パナソニック)と語る。従来のカメラでいうと、赤外線カットフィルターと、フィルターの挿抜(そうばつ)を行う可動部が不要となるため、イメージセンサーをモジュール化した際の小型化や堅牢性向上が期待できる。
物質内部の情報を高精細に取得
パナソニックは同技術において、人の目で見えない暗闇でも鮮明に画像が取得できること、画像欠落のない高精細な近赤外線域の撮像が可能などの特長を挙げた。
人の目では暗くて見えないようなシーンでは、近赤外線域での撮像によって鮮明に画像を取得できるという。明るい環境ではイメージセンサーの近赤外線域感度をなくして、可視光域のみでの撮像をすることで色情報を取得するこも可能となっている。
赤外線カットフィルターを用いない可視光、近赤外線撮像が可能なイメージセンサーには、一般に用いられるベイヤー配列*)のカラーフィルターの一画素を近赤外線用の画素として割り当てる特殊なカラーフィルター配列を用いた方式がある。同技術は、近赤外線域の感度を全画素で同時に制御することで、近赤外線域の撮像時には従来より4倍の画素数を実現。画像欠落のない近赤外線域の撮像が可能になる。物質を透過する赤外線の特徴を利用し、肉眼では見えない情報を非破壊で高精細に取得できるとした。
*)イメージセンサー内の色フィルターの並び方の1つ。2×2の4つの画素の色配列をRGGBとするものである。
左=可視光域のみで撮像した画面/右=可視光域と赤外線域で撮像した画面。近赤外線域撮像では水槽のしょうゆが透けて、水槽内の瓶のラベルを認識できている。今回評価を行った試作素子には、カラーフィルターが搭載されていないため、モノクロ画像での比較となっている (クリックで拡大) 出典:パナソニック
今回発表した技術の一部は、2017年2月5〜9日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「国際固体素子回路会議(ISSCC 2017)」で発表された。
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