フォグベースの設計に向けたオープンフレームワーク:IoTの開発を加速する
OpenFog Consortiumが、フォグベースのソリューション設計に向けたオープンフレームワークを発表した。懸念が増しているセキュリティ対策関連が、まずは最優先になるようだ。
フォグコンピューティングの活用
50以上の組織から成るコンソーシアム「OpenFog Consortium(以下、OpenFog)」が2017年2月8日(米国時間)、IoT(モノのインターネット)などを加速するフォグベースのソリューションを設計するためのオープンフレームワーク「OpenFogリファレンスアーキテクチャ」を発表した。
同コンソーシアムは、セキュリティをはじめとする分野の規格および製品設計に関する取り組みを導くため、ベースラインを設定することを目指している。
2015年11月に設立されたOpenFogは、IoTエンドノードからクラウドまであらゆる領域をカバーする形で、フォグの概念を幅広く定義している。同コンソーシアムは、バックホールを最低限に抑える方法の定義の他、信頼性のあるコミュニケーションや決定論的な遅延時間(レイテンシ)の実現を目指している。最終的には、エンドノード向けSoC(System on Chip)の設計からゲートウェイ、アプリケーションに至るまで、幅広い分野に向けてその定義を適用できるようにすることを目指す。
OpenFogは、全てのIoTノードが同コンソーシアムの定める要件に準拠するようになるとは考えていないという。OpenFogは、あらゆるIoT領域に自らが掲げるビジョン(「8つの技術領域と多くの垂直市場にまたがる相互運用が可能なサービス」)を広めるよう目指しており、テストベッドの開発や要件に準拠する製品の認証といった取り組みを進めている。
OpenFogのベースラインレポートの中では、特にセキュリティが大きく取り上げられている。OpenFogのアーキテクチャ部門の共同議長で、Cisco Systemsの主席エンジニアでもあるChuck Byersは「レポートには、われわれが特に掘り下げたセキュリティ分野で求められる活動について細かく説明した30ページに及ぶ補足資料が付いてくる。あらゆるシリコンベンダーやセキュリティスタックベンダーに読んでもらいたい」と述べた。
OpenFogの技術部門の共同議長で、Intelの主席エンジニアでもあるRob Swanson氏は、Trusted Computing Groupが策定したハードウェアの「Root of Trust(信頼性を実現する根幹となる部分)」に関する規格と、チップ設計者によるそれらの規格の実装方法については、特に修正する必要があると述べた。
また、Swanson氏によると、ARMやIntelのようなライバル同士は、競合するアーキテクチャのセキュリティプリミティブを統一する必要があるという。そうすることで、一貫した方法でアプリを開発できるようになる。例えば、共通の暗号メカニズムを用いてハードウェアを加速できるようになることが見込まれる。なお、ARMはOpenFogのメンバーであるが、現段階でOpenFogに参加しているチップベンダーはかなり少ない。
Byers氏によれば、「セキュリティ」はOpenFogのフレームワークが掲げる8つの技術領域の1つにすぎないが、今や“最大の悩みのタネ”であるという。また、同コンソーシアムは、IoTサービスを組織化するためにAPIとプロセスを定義することも計画しているそうだ。
Swanson氏は「われわれは、まずリファレンスアーキテクチャを含めたベースラインを設定することで、システムが定められたシナリオに対してどのように構成されるかを示さなくてはならなかった。そのため、行動を起こすことを呼び掛けるのは次のフェーズになりそうだ」と述べた。
OpenFogは現在、特定の低レベルの機能や最小限の実行可能なインタフェースのほか、それらをテストする方法について定義することに注目しているという。Swanson氏は「そのためにすべきことは山ほどある」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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