NDKとJAXA、宇宙用材料向けガス計測センサー開発:独自のツインセンサー技術を採用
日本電波工業(NDK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、真空環境下において宇宙用材料などから放出されるアウトガスを計測するシステム「Twin QCM」を開発したと発表した。
世界初というアウトガス計測システム
日本電波工業(NDK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2017年3月、真空環境下において宇宙用材料などから放出されるアウトガスを計測するシステム「Twin QCM」を開発したと発表した。独自のツインセンサー技術を用いた新型のシステムとなっており、NDKによると「世界初」の成果となっている。2017年4月から販売を開始する。
宇宙空間では、プラスチックや接着剤などの材料から放出されるアウトガスによる汚染(コンタミネーション)が問題となっている。地球観測衛星や天文観測衛星の望遠鏡レンズ表面などでコンタミネーションが生じると、光学性能や画質が低下し、寿命が短くなるという。材料からのアウトガスの発生を可能な限り抑えるため、正確な計測結果に基づく部材選定が重要になるのだ。
アウトガス計測は、これまで水晶振動子センサーによる「QTGA」計測法が用いられてきた。水晶振動子の電極に物質が付着すると、その質量に比例して周波数が低下する「質量付加効果」によるQCM法を原理とした計測法である。具体的には、参照用センサーと計測用センサーの差分を計測してアウトガスの付着量を計測し、センサー温度を制御することで、物質の付着、脱離特性から何のガスかを見極めている。しかし、2つの水晶振動子センサー間の特性差や温度差が、高精度な計測を妨げる要因だったとする。
Twin QCMセンサーでは、1枚の水晶振動子センサー上に参照用電極と計測用電極を設けたツインセンサー方式を採用し、特性差や温度差のバラつきを解消した。ツインセンサー技術には、NDKが提供するバイオセンサー「NAPiCOS」シリーズで培った技術を用いたという。JAXAは、開発品の評価実験などを担当した。
NDKは今後、国内外の宇宙開発機関などに販売するとともに、アウトガス計測を必要とする半導体や建材メーカー市場など一般産業分野への展開も予定するとした。
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