電源内蔵、TIの強化絶縁アイソレーターIC:高効率で低放射ノイズ
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、絶縁型電源を内蔵した強化絶縁対応のアイソレーターIC「ISOW7841」を発表した。電力変換効率が高く、低輻射と高イミュニティを実現している。
強化絶縁とDC-DC変換の機能をワンパッケージに集積
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2017年3月24日、絶縁型電源を内蔵した強化絶縁対応のアイソレーターIC「ISOW7841」を発表した。競合の同等製品に比べて電力変換効率は80%も高く、低輻射と高イミュニティを実現した。
ISOW7841は、絶縁性能を改善する対策の1つである強化絶縁とDC-DC変換の両機能をワンパッケージに集積した。これによって、マルチチャネルのシステム設計を行う場合でも、基板の実装面積と部材コストを低減できるとしている。外部に2個のデカップリングコンデンサーを接続するだけで済むという。一例だが、ボード面積の外形寸法は、従来構成だと35×28mmだったが、新製品を用いると22×15mmに小型化できる。
定格電圧は1kVrmsで、システムの信頼性向上と長寿命化を可能とした。出力電力は0.65W、入力電圧範囲は3.0〜5.5Vである。データ伝送は最大100Mビット/秒を実現しており、容量結合方式を用いて絶縁している。電力効率も極めて高い。これによって自己発熱は20℃程度に抑えた。この数値は競合製品に比べて最大で40℃低いという。
さらに、放射ノイズが競合品に比べて10dB以上、小さい。絶縁電源を内蔵すると一般的に放射ノイズが生じるが、これを抑えるよう工夫した。IECの静電気放電と電気的高速過渡現象を規定した標準規格「61000-4-x」の要件にも準拠している。ノイズ耐性も高いという。
ISOW7841は、16端子SOICワイドボディーパッケージで供給される。この製品はフェイルセーフ機能に関して、ローレベルまたはハイレベルに対応する製品が用意されている。参考価格は1000個購入時で単価が5.50米ドルである。さらに、2017年中には「ISOW78xx」ファミリーとして、絶縁定格、信頼性、耐性などが異なる6〜8品種の製品群を追加する予定だという。
TIのアナログシグナルチェーン事業部でアイソレーション製品のマーケティングマネジャーを務めるGina Hann氏は、ISOW7841の主な用途について、「FAやグリッドインフラ、モーターコントロール、インバーター、テスト&メジャメントなど、長期的な安定性と信頼性が要求される産業分野」を挙げた。
同社は、ISOW7841の評価モジュール「ISOW7841EVM」や、絶縁型のRS-485やRS-232向けの信号/電源統合レファレンスデザインも用意している。ISOW7841EVMの参考価格は49米ドルである。
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