機械学習を活用する将来の半導体設計:「人間の仕事」を減らす
次世代チップ関連の会議「ISPD」(2017年3月19〜22日、現地時間)では、「機械学習は、チップの設計において“人間の仕事”を減らす方向に向かっている」との見解が示された。
「人間の仕事」を減らす
「リアルタイムのマシンラーニング(機械学習)は、マイクロチップの物理設計における“人間の仕事”の多くを排除する方向に向かっている」
米国オレゴン州で2017年3月19〜22日(現地時間)に開催された米国計算機学会(ACM:Association for Computing Machinery)が主催する次世代チップ関連の会議「International Symposium on Physical Systems(ISPD)」の登壇者らはこうした見解を示した。
米国電気電子学会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)とIntelのフェローで、IntelのParallel Computing Labのディレクターを務めるPradeep Dubey氏は、「Quest for the Ultimate Learning Machine」と題する基調講演の中で、「コグニティブコンピュータがどのように“人間の仕事”に代わる処理を行うのか」について説明した。
Dubey氏は、「これまでは、機械は計算を、人間は半導体の物理設計の決定を行ってきた。だが、機械はいまやその両方を担うことができるようになった。コンピューティングは全く新しい領域に進もうとしている」と語った。
「ルールベースAI(人工知能)」と呼ばれる、意思決定をコンピュータに託す試みは、過去に失敗に終わっている。敗因は、専門家がそれぞれに独自の手法で実施して、ルールの最適化を行わなかったことにある。しかし、コグニティブコンピュータは、「検知」「推論」「行動」「適応と反復」という人間の意思決定における4つのステップを、最適設計に到達するまで実行することができる。
ただし、ニューラルネットワークベースのディープラーニング(深層学習)コグニティブコンピュータはこの4つのステップを実行できるが、現時点では各ステップの処理中にタイムラグが生じてしまう。Dubey氏は、「われわれの目下の課題は、この4ステップそれぞれの速度を上げて、コグニティブコンピュータがマイクロチップの物理設計における人的要素の多くを引き受けながら、リアルタイムオペレーションと同様に処理できるようにすることだ」と述べている。
「ここで最大の障害となるのが、検知と推論処理のディープラーニングだ」とDubey氏は述べている。Intelはこの問題を克服するために、「Xeon」プロセッサファミリーに「Lake Crest」を追加したという。Lake Crestは、Intelが2016年8月に買収したNervana Systemsが開発したディープラーニング用アクセラレーターである。Intelは、Lake Crestの次世代品として、今後数年の間に「Knights Crest」を展開する予定だ。これらの製品により、2020年までにマシンラーニングの時間を現行の100分の1に短縮することを目指すとしている。
一方、Xilinxの上級副社長兼CTO(最高技術責任者)を務めるIvo Bolsens氏は基調講演の中で、「FPGAだけで同様のジョブを実現できる」と述べた。Intelも2015年にAlteraを買収してFPGA技術を有している。
Bolsens氏は、「FPGAの最大のメリットは、インターコネクトに優れている点だ。FPGAによるマシンラーニングに有効なグローバルメモリやフローアーキテクチャは豊富にある」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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