フリッカー抑制とHDRを両立する車載イメージセンサー:感度は従来品比1.5倍に
ソニーは車載用CMOSイメージセンサーとして、LEDフリッカー抑制機能とHDR機能を同時に利用できる「IMX390CQV」を製品化した。感度についても従来品比約1.5倍高めたという。
ソニー、2017年5月からサンプル出荷へ
ソニーは2017年4月12日、LEDフリッカー抑制機能と120dBの広いダイナミックレンジでの撮影を実現するHDR機能を同時に利用できる車載向け約245万画素CMOSイメージセンサー「IMX390CQV」を2017年5月からサンプル出荷すると発表した。ソニーでは、LEDフリッカー抑制機能とHDR機能の同時利用を可能にしたイメージセンサーの商品化は業界初としている。
CMOSイメージセンサーは、LEDの光を撮影すると高い確率でLED特有のちらつき(LEDフリッカー/高速で点滅を繰り返すLEDの特性により発生)が生じた映像となる。そのため、信号機や自動車のテールランプなどに使われるLEDの光を正しく認識できない問題が起こる場合がある。
これに対し新製品は、ちらつきの原因となるLEDの点滅の影響を受けないよう、イメージセンサーの露光時間をLEDの点滅周期よりも長くする仕組みを導入。欧州可変交通情報標識用規格「EN 12966」で規定されたLED光源(周波数90Hz超)のLEDフリッカーを抑制できるようにした。
LEDフリッカー抑制機能と同時使用でもダイナミックレンジ110dB
HDR機能は、トンネル出入り口や夜間の市街地など明暗差の大きい場面でも画面全体にわたり黒つぶれや白飛びを起こさないようにする。新製品は独自の画素構造と露光方法により、120dBの広いダイナミックレンジを低ノイズで撮影するHDR機能を実現している。HDR機能はLEDフリッカー機能と同時に利用でき、同時利用時のダイナミックレンジは110dBとなる。
加えて、暗い場所でも鮮明な画像を撮影できるよう高感度化を実施した。フォトダイオードで得られた電子信号を電圧信号へ変換する際の効率を高めた回路を搭載したことで、従来のソニー製車載用CMOSイメージセンサー(型番:IMX290)と比べ約1.5倍の感度を実現したとする(標準値 F5.6、30分の1秒蓄積時1953mV)。これにより、月明かりに相当する0.1ルクスの低照度でも「高画質なカラー映像が撮影でき、障害物や人物などの画像を捉えられる」(ソニー)としている。
イメージサイズは対角6.67mm(1/2.7型)でユニットセルサイズは3×3μm。有効画素数は2017×1217画素(約245万画素)。パッケージは10×10.6mmサイズの96ピンプラスチックBGAを採用。インタフェースはMIPI CSI-2 シリアル出力となっている。2018年3月末までに、自動車向け電子部品の信頼性試験基準「AEC-Q100 Grade2」を満たす予定の他、機能安全要求レベル「ASIL C」に対応。量産開始予定は2018年3月でサンプル価格は5000円(税別)。
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