ニュース
SGCNT系水性塗料で、電磁波を99.9%以上遮蔽:複雑形状や可動部でも使用可能(2/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)の阿多誠介研究員らは、スーパーグロース法で作製したカーボンナノチューブ(SGCNT)を用いた水性塗料を開発した。この塗料を用いて形成した塗布膜は、99.9%を上回る電磁波遮蔽効果を実現した。
耐熱性も兼ね備える
塗布膜は耐熱性に優れていることも分かった。バーコート法で塗布した膜でも、180℃で24時間保持した加熱試験後に、加熱試験前と同等の電磁波遮蔽効果を維持していることが確認された。
開発したSGCNT系水性塗料と市販の銀(Ag)系塗料、カーボンブラック(CB)系塗料について、バーコート法を用いて塗布膜を形成し、それぞれの特性を比較した。その結果、SGCNT系水性塗料は、塗布できる基材の選択性が高く、塗布膜は実用上十分な電磁波遮蔽効果を持ち、屈曲性に優れ、変形にも強いことを確認した。
これに対して市販のAg系塗料は、電磁波遮蔽効果に優れているものの、塗布できる基材が限られる。しかも、温環境下では塗布膜を形成した基材とバインダー樹脂との熱膨張率の違いからゆがみが生じ、ひびや剥がれが発生した。市販のCB系塗料は、塗布できる基材の選択性は高いものの、十分な電磁波遮蔽効果を示さなかったという。
CNT複合材料研究拠点では今後、企業から提供される基材に、開発したSGCNT系水性塗料で電磁波遮蔽膜を形成し、サンプルとして戻すサービスを提供していく考えである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産総研、「世界最高」の磁場中臨界電流密度実現
産業技術総合研究所(産総研)は成蹊大学などと共同で、低コストの高温超電導線材を用いて、世界最高水準の磁場中臨界電流密度を実現した。 - 「光子1個が見える」、産総研が光子顕微鏡を開発
産業技術総合研究所(産総研)は、光子を1個ずつ観測できる「光子顕微鏡」を開発した。 - 産総研、半導体の表面電場を測定する手法を開発
産業技術総合研究所(産総研)とSCREENホールディングスは、太陽電池やICの表面電場を定量測定する手法を大阪大学と共同で開発した。 - 産総研、内部短絡しない全固体Li二次電池を開発
産業技術総合研究所(産総研)の片岡邦光主任研究員らは、高い安全性と信頼性を実現した小型全固体リチウム二次電池を開発した。単結晶を用いて作製した固体電解質部材は、酸化物系で世界最高レベルの導電率を実現したという。 - 産総研、ナノ炭素材料の安全性試験手順書を公表
産業技術総合研究所(産総研)と単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)は、「ナノ炭素材料の安全性試験総合手順書」を公表した。Webサイトから無償でダウンロード可能だ。 - 産総研、光照射で高純度ナノ炭素材料の薄膜形成
産業技術総合研究所の神徳啓邦研究員らは、純度が高いナノ炭素材料の薄膜を、光照射するだけで簡便に作製できる技術を開発した。二次電池用やキャパシターなどへの応用が期待される。