LPWAへの投資は「セルラーM2Mを優先」 u-blox:SIGFOX、LoRaについては静観
u-blox(ユーブロックス)は、「LTE Cat NB1(NB-IoT)」「LTE Cat M1」といったセルラーM2M(Machine-to-Machine)に対応するモジュールの開発を、早くから行ってきた。自社製の通信チップセットを開発するなど、投資を続けている。一方で、その他のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークについては、少なくとも今後しばらくは動向を注視する方針だ。
投資を進めるセルラーM2M
GNSS(全球測位衛星システム)モジュールや無線通信モジュールを手掛けるスイスu-blox(ユーブロックス)は、2017年に設立20周年を迎えた。この節目の年の6月、u-bloxは初めての試みとしてアジア4カ国(日本、中国、台湾、韓国)のメディアを招き、新製品や事業戦略を説明する機会を設けた。
u-bloxの共同設立者でエグゼクティブバイスプレジデントであるAndreas Thiel氏は、無線通信モジュールの戦略を語った。
Thiel氏は、M2M(Machine-to-Machine)通信にセルラーネットワークを使用する、いわゆるセルラーM2Mの市場について、「2016〜2021年にかけて、年平均成長率35%で成長することが見込まれている、期待の大きい市場」と強調する。
LTE NB1対応のモジュールも
u-bloxは、3GPPが標準化したセルラーM2M規格「LTE Cat 1」「LTE NB(Narrow-Band)1(NB-IoT)」「LTE Cat M1」に対応する無線モジュールの開発に早くから着手してきた。2016年6月には、「世界初」(同社)とするLTE NB1準拠の無線モジュール「SARA-N2」を、そして2016年9月にはu-blox初となるLTE Cat M1対応無線モジュール「SARA-R4」を発表している。
2016年11月には、自社で開発した通信用チップセット(ベースバンドIC+RF IC)を初めて搭載した、LTE Cat 1対応の「LARA-R3121」を発表した(関連記事:u-bloxが独自LSI搭載のLTE Cat1モジュール発表)。自社製の通信用チップセットを搭載したのは同製品が初めてだが、u-bloxは、いずれはNB-IoTやLTE Cat M1などのモジュールでも自社製チップセットを搭載する方針。
さらに次のセルラーM2M規格である「LTE Cat M2」「LTE NB2」対応のチップセットも開発する予定だとしている。LTE Cat M2とLTE NB2対応モジュールについては、「3GPPでの規格策定が完了していないので、少なくとも2018年末以降の発表となるだろう」(Thiel氏)という。
u-bloxの通信用チップセットの開発戦略は明確だ。セルラーM2Mモジュール用については自社で、LTE Cat 6やCat 9、Cat 16など高速、高帯域幅のセルラー通信モジュール用では、これまで通りQualcommやIntelなどサードパーティーから調達する。Thiel氏は、「セルラーネットワークは、3Gや4Gの他、いまだに2Gが使われているケースがあるなど、サポートするにはあまりに幅があり過ぎる。そこに投資するよりも、セルラーM2Mに集中して投資すべきだと判断した」と語った。
M2MやIoT(モノのインターネット)向けであるLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークには、セルラーM2M規格の他に、「SIGFOX」や「LoRaWAN」がある。両者とも特に欧州での勢いが強いが、u-bloxは、これらに対応するモジュールを開発する計画があるのだろうか。
セルラーM2M以外のLPWAへの投資は、まだ判断できず
Thiel氏は、「(現時点では)考えていない」とする。「3GPP以外のLPWAについては、もちろん動向を注視してはいるが、これらは断片化している印象を受ける。長期的に考えた場合、当社の注力分野の1つである産業向けネットワークとして適しているかが分からない。一方で、セルラーM2M規格は商用化までに時間はかかったものの、3GPPが策定していることから、各国の通信事業者が関わることになるので、今後大きな市場になると考えている。SIGFOXやLoRaWANに対応するモジュールの開発に投資すべきかどうかは、まだ分からない」(Thiel氏)
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