スパコンの省エネ性能で東工大1位、産総研3位:1W当たり14.110GFLOPS
東京工業大学(東工大)と産業技術総合研究所(産総研)がそれぞれ保有するスーパーコンピュータ(スパコン)は、省エネ性能の世界スパコンランキング「Green500 List」で1位と3位を獲得した。
RWBC-OILによる研究協力などが結実
東京工業大学(東工大)と産業技術総合研究所(産総研)は、それぞれ保有するスーパーコンピュータ(スパコン)が、省エネ性能の世界スパコンランキング「Green500 List」において1位と3位を獲得した。ドイツのフランクフルト市で開催された、スーパーコンピュータに関する国際会議「ISC HIGH PERFORMANCE 2017(ISC 2017)」で現地時間2017年6月19日に発表された。
Green500 Listは、スパコンの電力性能(速度性能値/消費電力)を比較して、半年ごとに発表される順位。今回世界1位を獲得したのは、東工大学術国際情報センター(GSIC)のスパコン「TSUBAME3.0」。2017年8月に本格稼働の予定である。これまで利用してきた「TSUBAME2.0/2.5」の後継機となる。
TSUBAME3.0は、Green500 Listの2017年6月版において、1W当たり14.110GFLOPSという性能を達成した。実際に運用される日本のスパコンで、世界1位を獲得したのは今回が初めてだという。TSUBAME3.0の設計、開発、運用準備などは、GSICが日本SGIやNVIDAと連携しながら行った。
TSUBAME3.0は、人工知能(AI)やビッグデータ分野の計算処理に有効とされる16ビットの半精度において、47.2PFLOPSの性能を達成している。このシステムには、2160個のNVIDIA製GPU「Tesla P100」が搭載されている。これらのGPUやCPUは、外気に近い温度の冷却水を用いて直接冷却している。冷却効率を示す指標の1つであるPUE値は1.033(推定値)と極めて高い。
このような省エネ設計を実現できた背景には、「スパコン・クラウド情報基盤におけるウルトラグリーン化技術」や「スマートコミュニティ実現のためのスパコン・クラウド情報基盤のエネルギー最適化の研究推進」といったプロジェクトの研究成果が活用されているという。
一方、世界3位となったのは産総研人工知能研究センター(AIRC)のクラウド型計算システム「産総研AIクラウド」(AAIC)である。AIRCが設計、開発を担当し、NECとNVIDAの技術を用いて実用化した。2017年4月より試験的運用を始めている。AAICは、Green500 Listにおいて1W当たり12.681GFLOPSという値を達成した。空冷方式のスパコンとしては世界1位の値だという。
AAICには、合計400個のNVIDIA製GPU「Tesla P100」が搭載されている。半精度での性能指数は8.6PFLOPSである。AI研究開発向け共有計算プラットフォームとしては、現時点で国内最大級の演算性能だという。また、システム全体の消費電力を最大150kWに抑える省エネ運用を可能とした。このため、特殊な冷却システムは不要で、一般的なサーバルームで運用することができる。
産総研と東工大は、2017年2月に「実社会ビッグデータ活用オープンイノベーションラボラトリ」(RWBC-OIL)を設置した。ここでの研究協力などが今回の成果に結びついた、と関係者はみている。また、産総研は2017年度に導入予定の「AI橋渡しクラウド(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」構築に今回の成果を活用していく考えである。
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