「3D NANDのスイートスポットは64層」 WDが主張:真のコスト競争力を発揮する
Western Digital(WD)のメモリ技術担当者は、2D NAND型フラッシュメモリに比べて、真のコスト競争力を発揮できる3D NANDフラッシュの積層数は、現在のところ64層だと語る。
「3D NANDフラッシュはコスト効率が高い」
Western Digital(ウエスタンデジタル)でメモリ技術担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるSiva Sivaram氏は、「64層の3次元NAND型フラッシュメモリ(3D NANDフラッシュ)は、プレーナ型NANDフラッシュ(2D NANDフラッシュ)よりも高いコスト効率を実現することが可能だ」と考えているようだ。
Sivaram氏は、最近行われたEE Timesとの電話インタビューの中で、「64層の3D NANDフラッシュは、強い影響力を持つ技術である。今後、Western Digitalの製品シリーズの50種類以上において採用が進んでいくだろう。2017年中には、Western Digitalにおいて、ビット換算にして全体の50%が3D NANDフラッシュとなり、さらにそのうちの75%以上が64層の3D NANDフラッシュになるとみている。3D NANDフラッシュが、2D NANDフラッシュに比べて、真のコスト競争力を見いだすことができる、最初のポイントだといえる」と述べている。
Western Digitalは最近、同社の64層3D NANDフラッシュ技術を適用した、「世界初」(同社)をうたうクライアント用SSDを発表した。「WD Blue 3D NAND SATA SSD」は、DIY(Do-It-Yourself)愛好家や再販業者、システムビルダーなどに向けた製品で、もう一方の「SanDisk Ultra 3D SSD」は、PCの性能を向上させたいと考えるゲーム愛好家やクリエーターなどをターゲットに定めている。
いずれの品種も、容量は約2Tバイトだ。Sivaram氏は、「64層の3D NANDフラッシュを初めて採用した、ハイエンドのコンシューマ製品である。ダウンストリームを拡大していくことにより、モバイルや組み込みだけでなく、エンタープライズ向けとしても普及が進んでいくだろう。技術導入までに最も時間がかかるのが、エンタープライズ向け製品だ」と述べている。
Western Digitalにとって、64層3D NANDフラッシュは今や、同社の最高クラスの2D NANDフラッシュよりも低価格だ。
Sivaram氏は、「誰にでも達成できることではないが、どの企業も非常に速いスピードで技術の実現を目指している。当社は以前に、48層の3D NANDフラッシュを小売店向けに限定的に製造していたが、本格的な量産レベルには至らなかった。また、32層に関しては、社内のみで製造していた。技術を確立するためには、こうしたステップを踏まえる必要があったと考えている」と述べる。
3D NANDフラッシュは、新しい製造装置が必要になることや、製造スペースなどの面から、コストがかさむ。Sivaram氏は、「64層は、ビットの増加によるコストの増加を正当化するための、分岐点だといえる。ただし、64層でも、1セル当たり3ビットを実現する必要がある。適切に集積することで1セル当たり3ビットを達成できれば、どの2D NANDフラッシュよりも低いコストを実現することが可能だ」と述べている。
Sivaram氏は、64層の3D NANDフラッシュは、今後1年半の間に普及が進むとみている。
Objective Analysisによる、2D NANDフラッシュと3D NANDフラッシュの比較。128Gビット TLC(Triple Level Cell) 2D NANDフラッシュと、32層の384Gビット TLC 3D NANDフラッシュを比較している
3D NANDフラッシュの次のステップは、さらなる積層だ。32層や48層、64層を積層して、96層や128層としていくのだ。Sivaram氏は、「理論的には64層の倍数になっていくと考えられる。ただ、どこまで積層できるかは、業界の誰にもまだ分からないだろう」と説明した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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