微細化の先導役がPCからモバイルに交代――先端プロセスを使いこなすスマホメーカー:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(17)(1/3 ページ)
10nm世代の微細プロセス採用プロセッサを載せたスマートフォンが出そろってきた。これら最新スマートフォンの内部を観察すると、各スマートフォンメーカーが10nmプロセッサを使いこなすための工夫が垣間見えてきた。
10nmプロセッサ搭載スマホが市場に
2017年6月に発売された大手メーカー製のスマートフォンやタブレット製品が搭載するプロセッサは10nmという最先端の微細製造プロセスを用いたプロセッサ一色になっている。微細化の効果は非常に大きく、10nmの前世代プロセス(=14/16nm世代)に比べて、同じチップ面積にほぼ2倍の回路を搭載できる上、高速化、低消費電力化が目に見える数字となって表れている。これらから判断する限り、現状は“ムーアの法則、大いに健在”と言える(関連記事:ムーアの法則は健在! 10nmに突入したGalaxy搭載プロセッサの変遷)。
さて、2017年6月に発売された最新スマートフォンの1つであるSamsung Electronicsの「Galaxy S8」は、Samsung製の10nm採用プロセッサ「Exynos 8895」搭載版と、Qualcomm製のプロセッサ「Snapdragon 835」搭載版の2モデルが存在している。2モデルとも基本機能は同じだが、対応する通信規格が若干異なっており、2つ以上のプラットフォームで世界をカバーする。
こうした2つのプラットフォームによる展開はApple製品も同じで、モデムチップにQualcommを用いるものとIntelモバイルのチップを用いる2種類が存在する。若干ながら性能の優劣はあるものの、ユーザーにはほぼ分からないレベルの性能差に抑え込まれている。Galaxy S8が搭載するExynos、Snapdragonはともに、10nmプロセスで製造されている。図1はGalaxy S8の分解過程、背面カバーを取り除いた様子である。
2モデルともに非接触充電用のコイルや内部を固定するためのフレーム(=図1では割愛している)の下には全く同じサイズ、形状のコンピュータ基板と電池、スピーカーが配置されている。基板のほぼ中央には金属が貼られており(ノイズや干渉を防ぐためのシールドと呼ばれるもの)その下にプロセッサが置かれている。プロセッサはいわゆる頭脳なので、最も速い処理が要求され、億単位のトランジスタを実際にはほぼ同時に動かすので、多大な熱を発生する。半導体チップの表面では100℃にも迫る熱を持ってしまう。この温度を効率よく逃がすために、さまざまな工夫が成されているのだ。
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