力任せの人工知能 〜 パソコンの中に作る、私だけの「ワンダーランド」:Over the AI ―― AIの向こう側に(12)(6/9 ページ)
私はこれまで、人口問題や電力問題、人身事故などさまざまな社会問題を理解するためにシミュレーションを利用してきました。シミュレーションは、AI(人工知能)という概念を飛び越えて、「人間が創造した神」と呼べるかもしれません。今回は、シミュレーションに最適なAI道具の1つとして、「オブジェクト指向プログラミング」を解説します。これは、PCの中に“私だけのワンダーランド”を力任せに作る技術ともいえます。
シミュレーションで「世界を検分」する楽しさ
そして、私自身も、これまでシミュレーションには随分助けてもらいました。
以下の記事は、助けてもらった成果のほんの一部です。
(1)「驚愕の人口・高齢化予測〜70年後に日本の人口は半分、40年後に人類未踏の高齢社会」(Business Journal)
(2)「“電力大余剰時代”は来るのか(前編) 〜人口予測を基に考える〜」
(3)「安心してください、リバウンドは錯覚ですよ」
(4)「1/100秒単位でシミュレーションした「飛び込み」は、想像を絶する苦痛と絶望に満ちていた」
(5)「地球温暖化の根拠に迫る」
これらは、私が片っ端から試みたシミュレーションの一部ではありますが、このシミュレーションを作るプロセスで、さまざまなパラメータを得るために、いろんな資料を読み漁ったり、実験したり(例:同じ食事メニューを30日ぶっつづけで続けたり、1kgの肉の塊を二階の窓から投げ落したり*))、本当に大変でした。
*)編集注:めったにお目にかかれないであろう、その実験は、こちらからご覧ください。
それでも、国際機関や政府、あるいは御用研究機関の発表ではなく、自力で「世界」を「検算」しているという感覚は、なかなか楽しいものでした。
それと同時に、人文学系の学者や本の著作者の体たらくには、がっかりしています。
仮説を主張し、それを自分のロジック(理屈)で裏づける、という論証方式は従来通りとしても、この時代にあって、なぜ、「自分の仮説を、数字を使って、自力で検証しようと試みないのか」と、私はかなり本気で腹を立てています
なるほど、これまでは、高度で膨大な計算リソースは非常に扱い難く、一部の権力者に庇護された技術者や科学者たちだけの、特権的な所有物あったのは事実です。しかし、その時代は、とうに終わりを迎えています(関連記事:おうちにやってくる人工知能 〜 国家や大企業によるAI技術独占時代の終焉)。世の中には地球温暖化計算をExcelで試みている人だっているくらいです*)。
*)「Excelで操る! ここまでできる科学技術計算」は、何度も参考にさせていただいています。
人文学系で想定する世界観は、地球温暖化計算よりずっと簡易なものであるはずですから、ほとんどの場合Excelだけで計算できると、私は思っています。
私は、不毛な「水かけ論」というリソースの無駄遣いから世界を救うために、人文学系の人にこそ、「数字」や「シミュレーション」という武器を携えてほしいのです。
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