4μmの微細配線を連続印刷できる配線形成技術:低耐熱性基板への印刷が可能
トッパン・フォームズは、線幅4μmの微細配線の連続印刷が実用レベルで可能な新しい印刷微細配線形成技術を確立したと発表。同技術を用いれば、耐熱性の低い基材への印刷と配線の透明化を両立できるという。
100nm程度の薄膜形成も可能
トッパン・フォームズは2017年7月3日、微細配線用導電インキ(銀塩インキ)とそれに対応する印刷プロセス技術を組み合わせ、新しい印刷微細配線形成技術を確立したと発表した。同社によると、従来の印刷技術で形成できる線幅は実用レベルで10μm前後だったが、今回、線幅4μmの微細配線の連続印刷が実用レベルで可能になったという。
線幅4μmの微細配線は肉眼では確認しづらいため、見かけ上配線を透明できるというメリットがある。その応用例の一つが、タッチセンサーパネル用の透明電極だ。しかし、透明電極には一般的にITO(酸化インジウムスズ)が使われる。インジウムはレアメタルのため、安定供給やコストが課題となっている。さらに、ITO膜の形成は高熱を要するため、耐熱性の低い基材への成膜は困難だった。
一方、トッパン・フォームズの印刷微細配線形成技術は、より低い温度域で線幅4μmの微細配線の形成が可能。そのため、耐熱性の低いプラスチック基材、例えばポリカーボネートなどの使用と配線の透明化を両立できる。その上、配線の膜厚を100nm程度に薄膜化することも可能。薄膜化しても、導電性は良好。ITOの体積抵抗率が150〜300μΩ・cmなのに対して、微細配線用導電インキの体積抵抗率は7μΩ・cmとなる。
また、一般的に銀配線を用いた電子機器では、エレクトロケミカルマイグレーションの懸念があるが、トッパン・フォームズが開発した微細配線用導電インキは実用レベルの耐性を持ち、幅広い応用展開が可能。タッチセンサーパネル用の透明電極の他にも、ウェアラブルセンサーやIoT(モノのインターネット)向けセンサーに活用できる。
トッパン・フォームズは今後、開発技術を広く普及させるため、印刷用インキの販売や製品化に向けた企業間提携を積極的に行うという。また、さまざまなアプリケーションの開発や事業推進も図っていくとしている。
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