Verizon 5G準拠の波形が生成できる44GHz対応信号発生器:キーサイトが5G製品群を発表
キーサイト・テクノロジーは5G(第5世代移動通信)開発に向けたネットワークアナライザーと、PXI Express(PXIe)モジュール型マイクロ波信号発生器を発表した。キーサイトは、素材や部品、モジュール、コネクターといった分野のメーカーからの5G製品についての問い合わせが増えていると話す。
900Hz〜120GHzのミリ波帯に対応したネットワークアナライザー
キーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)は2017年6月27日、同社の「PNAネットワークアナライザ」の新製品として、周波数帯域が900Hz〜120GHzの「N5291A」を発表した*)。
*)周波数帯域が900Hz〜110GHzの「N5290A」も併せて発表したが、こちらは主に中国向けの機種となる。
新製品のメインの用途は5G(第5世代移動通信)だ。5Gでは、ミリ波帯の活用が要素技術の1つになっている。中でも28GHzと39GHzは、実用化に向けた開発が進んでいる周波数帯だ。さらに、車載レーダーや次世代無線規格「IEEE 802.11ad/ay」では、Eバンド(60G〜90GHz)が注目されている。「28GHz、39GHz、Eバンドへの投資が本格化している」とキーサイトは説明する。「以前は、5G開発関連の製品については、通信業界のトップメーカーからの問い合わせや引き合いがほとんどだったが、最近は素材、部品、モジュール、コネクターメーカーなど、要素技術を開発する業界からの引き合いが増えている」(キーサイト)
このように、5G開発を手掛けるメーカーが増えてきたことから、より使いやすいネットワークアナライザーシステムの開発を目指した。
N5291Aは、同製品向けに新たに開発した周波数エクステンダーおよびテストセットコントローラーと組み合わせ、ネットワークアナライザーシステムとして使う。従来品に比べて、エクステンダーを接続しやすくなっていることが特長だ。従来のネットワークアナライザーシステムでは、ケーブルを何本も使って、エクステンダーとテストセットコントローラーを接続する必要があり、手間が掛かっていた。新製品では、RFケーブルや制御ケーブルをまとめた専用ケーブルを開発し、エクステンダー1個につき1本のケーブルで接続できるようになっている。
110GHzにおけるシステムダイナミックレンジは110dB以上で、最大出力パワーは6dBmである。24時間にわたり、0.015dB未満(120GHz時)の振幅安定性と、0.15度未満の位相安定性を維持できる点も大きな特長だ。
N5291Aの価格は約3900万円(本体価格)から。N5291Aは、既存のネットワークアナライザー(26.5GHz対応)をベースに開発したので、価格を抑えることができたという。N5291Aの他、エクステンダーとテストセットコントローラーを別途、購入する必要がある。また、900Hzの低周波数対応はオプションとなる。
Verizonの5G規格に準拠した波形生成も可能
キーサイトは2017年7月6日にも、PXI Express(PXIe)モジュール型マイクロ波信号発生器「M9383A」を発表した。こちらも5Gが主なターゲット市場である。アナログ信号を生成する機種と、ベクトル信号を生成する機種の2種類がある。なお、M9383Aはモジュールなので、PXIe信号発生器を構成するには、PXIシャシーとコントローラー、ソフトウェアが別途必要になる。
M9383Aは、1MHz〜44GHzの周波数帯をカバーする。ベクトル信号生成モデルは最大1GHzの変調帯域幅を備え、1%のEVM(エラーベクトル振幅)を実現している。「1%のEVMの実現は難しかったが、顧客からの要望が強かった」とキーサイトは説明する。
M9383Aと、キーサイトの信号生成ソフトウェア「Signal Studio」、EDA環境「SystemVue」を使うことで、米国の通信事業者Verizonが策定する独自の5G規格に準拠した波形や、8×100MHz OFDM(直交周波数分割多重方式)コンポーネントキャリアといった、5Gの候補となっている波形を生成できるようになる。
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