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強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)の基本動作:福田昭のストレージ通信(66) 強誘電体メモリの再発見(10)(2/2 ページ)
今回は、強誘電体メモリ(FeRAM)の基本動作を解説する。FeRAMでは、強誘電体キャパシターにおける残留分極の向きがデータの値を決める。さらに、読み出し動作と微細化に伴う問題についても触れる。
読み出し動作の実際と微細化に伴う問題
FeRAMは、1個のセル選択トランジスタと1個のキャパシターで1個のメモリセルを構成できる。キャパシターを構成する2枚の電極は、1枚がプレート線、もう1枚がビット線に接続されている。読み出し動作を始めるときには、ビット線を最初に充電しておく必要がある。ビット線の電位が一定の値になったところで、プレート線に電圧を印加し、データの読み出し動作(分極反転が起こるかどうかの検知動作)を実行する。
分極の反転が発生するとビット線に電流が流れ、ビット線の電圧が大きく上昇する。これを検知することで、データを判別する。
ここで問題となるのが、微細化との兼ね合いだ。微細化によってキャパシターの面積は減少する。しかし、読み出しに必要な電流量はそれほど変わらない。このため、微細化すると、単位面積当たりの残留分極量を増やす必要がある。微細化の問題については本シリーズで後ほど、詳しく説明する予定だ。
読み出し動作の実際。左は等価回路図。中央は読み出し動作におけるビット線電圧の変化。右は微細化に伴う、安定な読み出し動作に必要な分極量の変化。130nm世代に比べると、45nm世代では単位面積当たりの分極量を4倍強に増やす必要がある。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
(次回に続く)
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