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ドリフト電流や拡散電流と異なる光電流を実証太陽電池や光検出器の高性能化へ(2/2 ページ)

理化学研究所(理研)などの共同研究グループが、p‐n接合において電界に比例するドリフト電流や、キャリア濃度差に比例する拡散電流とはメカニズムが大きく異なる光電流であるシフト電流の観測に成功した。

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エネルギー散逸がほとんどないシフト電流


局所光励起による光電流の場所依存性
aは光の照射面積を絞ってTTF-CAを局所的に光励起し、その位置を走査することで得られた短絡電流の場所依存性。赤は70K(強誘電相)、青は90K(常誘電相)の結果。bはaの90Kの結果の縦軸を拡大したもの。強誘電相では電極間の中心付近で電流が最大となっているのに対し、常誘電相では電極付近で電流が最大になり、両電極で電流の符号が反転している。 出典:JST(クリックで拡大)

 次に、光の照射面積を絞って局所的に光励起し、その位置を走査することで、光電流が電極間のどこで発生しているかを調べた。81K以下の強誘電相では、光電流は試料の中心付近で大きく、電極近傍で減少する様子が観測できた。電極間距離は600μm以上あるため、中心付近で生成された光キャリアは、電極まで数百マイクロメートルの距離を移動しているといえる。

 一方、81K以上の常誘電相では、強誘電相に比べて光電流の絶対値が非常に小さく、電極近傍でだけ観測された。この常誘電相のプロファイルは典型的な拡散電流を示しており、どんな物質でも観測された。対して、強誘電相の結果は、拡散電流やドリフト電流では説明できない非常に長距離のキャリア輸送を示し、シフト電流の特徴が明確に現れていた。

 研究グループは以上により、可視赤外光に対する大きな光電流がTTF-CAで発生することに加え、その起源であるシフト電流ではエネルギー散逸がほとんどないことを実証した。

 シフト電流はドリフト電流や拡散電流とメカニズムが大きく異なるため、シフト電流による光起電力効果を利用すれば、従来の光起電力素子で重視された移動度や不純物密度などに縛られない光電変換材料の開発につながり得る。

 また、シフト電流はバンドギャップ以上の光起電圧の出力が可能なので、従来の光起電力素子を上回る高いエネルギー変換特性も期待できる。そのため、今回の研究結果は革新的な光検出器や、従来と異なる光照射条件で使える太陽電池の開発への道を開く可能性がある。

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