富士通、AI技術で橋内部の損傷度合いを推定:センサーを橋の表面に取り付け
富士通と富士通研究所は2017年8月、ディープラーニング(深層学習)を拡張した人工知能(AI)技術を用いて橋内部の損傷度合いを推定できる、センサーデータ分析技術を開発した。
老朽化進む社会インフラの維持管理業務を高度化
富士通と富士通研究所は2017年8月28日、人工知能(AI)技術を用いて橋内部の損傷度合いを推定できる、センサーデータ分析技術を開発したと発表した。さまざまな社会インフラや機器の故障、劣化状態を推定および検証することが、比較的容易となる。
今回は、富士通研究所独自のAI技術である時系列データに対するディープラーニング(深層学習)技術を拡張した。IoT(モノのインターネット)機器に搭載されたセンサーでさまざまな振動データを収集し、これらデータから抽出した幾何学的特徴を学習する。これによって、構造物や機器の状態を正常値との差で示す「異常度」や、状態の急激な変化を示す「変化度」を数値化し、異常の発生や特徴的な変化を検知することができるという。
富士通は、モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS[ライムス]:Research Association for Infrastructure Monitoring System)が行った加速試験(輪荷重走行試験)で得られた振動データに、今回同社が開発した技術を適用し検証した。この結果、振動データから抽出した幾何学的特徴は、健全な時には1つの固まりにまとまっているが、橋の内部に損傷が生じている場合、その形状は変化することが分かった。
さらに、幾何学的特徴を数値化して算出された異常度や変化度の結果と、床版内部を測定するために埋め込まれたひずみセンサーによる測定結果とが一致することを確認した。これによって、開発した技術は、その有用性が立証されたという。
橋の表面に取り付けた1個の加速度センサーで得られたデータを、開発した技術で解析すると、広い範囲で橋内部の損傷度合いが推定できることを確認した。内部ひずみの発生を検知することもでき、損傷の早期発見や対策に適用することが可能である。
富士通は引き続き、実際の橋に生じる振動データを用いた実証実験を重ねていく。2018年ごろには、開発した技術の社会実装を目指していく計画である。
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