富士通研究所、VM制御技術を開発:サーバ実装密度を改善
富士通研究所は、データセンターに設置されたラック当たりのサーバ実装密度を向上させるための仮想サーバ(VM)制御技術を開発した。サーバラックの稼働効率が90%の場合、設置スペースを40%削減することが可能になるという。
データセンターの設置スペース、40%削減を可能に
富士通研究所は2017年6月、データセンターに設置されるラック当たりのサーバ実装密度を向上させるための仮想サーバ(VM)制御技術を開発したと発表した。この技術を用いると、サーバラックの稼働効率が90%の場合、設置スペースを40%削減することが可能になるという。
データセンターでは、IoT(モノのインターネット)化の進展などにより、設置されるサーバの台数が急増している。しかし、ラックへ搭載できるサーバの台数は、ラックの給電量とサーバの定格電力合計値で決まるため、サーバを増設するには限界があった。一方で、サーバの実働負荷は50%以下の場合も多く、ラック当たりの電力使用量は定格電力を大きく下回ることもあるという。
同社は今回、ラック当たりのサーバ実装密度を向上させるVM制御技術を開発した。データセンター内のラックに、物理サーバを高密度に実装するとともに、予備の区画を設けた。運用区画(物理配置)にあるサーバの電力消費量がラックの給電量に近づくと、サーバのシリアル番号やラック番号とひも付けて予備の区画にVMを移動させ、収集、管理する。これによって電力消費量がラックの給電量を超えないよう制御し、効率的なサーバ設置を可能とした。
今回、ラックごとのマイグレーション頻度を統計的に予測して、ラックに搭載可能なサーバの台数を決める技術も新たに開発した。30%のサーバ負荷が正規分布の中心となる事例では、50%の負荷の電力値に基づいた台数を搭載すれば、95.5%の負荷変動を吸収しつつ、サーバ実装密度を最大にできることが分かった。
開発した技術を適用して、5区画でサーバラックの稼働効率が90%になるように制御しているデータセンターでは、サーバラックの稼働効率が50%で10区画を使って運用している場合に比べて、設置スペースを40%削減することができるという。
富士通研究所は2018年度中にも、今回開発した技術を富士通が提供するインフラ運用管理ソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager」に実装する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 全固体電池用、高エネルギー密度の正極材料開発
FDKと富士通研究所は、全固体リチウムイオン電池の正極材料として、エネルギー密度が高い「ピロリン酸コバルトリチウム」を共同開発した。 - 光モジュールを1.4倍高密度化へ 新方式の受信回路
富士通研究所とトロント大学は2017年2月6日、データセンター内のサーバとスイッチ間通信で用いられるイーサネット向け光モジュールにおいて、従来構成の55%の電力で動作するリファレンスレス受信回路を開発した。半導体技術の国際会議「ISSCC 2017」で詳細を発表する。 - 理研、東芝とNEC、富士通の3社とAI研究で連携へ
理化学研究所(理研)は2017年3月10日、東芝、NEC、富士通の各社と、理研革新知能統合研究センター内に連携センターを開設する。設置期間は、2017年4月1日から2022年3月31日までの予定だ。 - 光通信網伝送性能を高精度に推定する技術を開発
富士通研究所などは2017年3月21日、光ネットワークのスループット向上につながる新しい伝送性能推定技術を開発したと発表した。 - グラフェンを用いた新原理ガスセンサー 「世界初」
富士通研究所は2016年12月5日、グラフェンを利用した新原理のガスセンサーを「世界で初めて」開発したと発表した。従来のセンサーと比較して、10倍以上の感度を実現したという。 - 200kmを検知、ミリ波レーダー向けCMOS回路
富士通研究所は、周波数の変調速度を高めたCMOSミリ波信号源回路を開発した。「76G〜81GHzの広帯域で世界最速の周波数変換を実現した」(同社)ことで、車載レーダー用途では、相対速度が時速200kmでも、車両や歩行者などのターゲットを検知することが可能になる。