“3色のレーザー”で新市場攻略を狙うシャープ:3本の矢と同じように……(2/2 ページ)
シャープは2017年9月、波長515nmの緑色半導体レーザー製品のサンプル出荷を同年10月20日から開始すると発表した。これによりシャープは、光の三原色(赤色、青色、緑色)をカバーする半導体レーザー製品群を構築。「三原色を扱うことで多くのメリットをユーザーに提供できる」(同社)という。
三原色を扱うこそのメリット
田中氏は、1社で三原色の半導体レーザーをそろえたことで、ユーザーに対し多くのメリットを提供できると強調する。「これまで2社以上とやり取りする必要があった、半導体レーザーに関する商談や調達、品質関連業務が1社だけで済む。結果、ユーザーは製品を早期市場投入できる」
また、「複数社から半導体レーザーを購入すれば、色ごとに電気的特性や光学特性はバラツキが生じ、ユーザーは調整を迫られた。今後、シャープでは、ユーザーの要望を聞きながら、各色の特性バラツキを最大限最適化し提供することが可能になる。ユーザー側のメリットは大きいはずだ」とする。今後、シャープは三原色の半導体レーザーを組み合わせたレーザーモジュールの開発、提供も行う予定だ。
シャープでは、こうした三原色の半導体レーザーの品ぞろえで、レーザー応用市場の拡大を図っていく方針。特に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、スマートプロジェクターといった成長が期待される新レーザー応用市場を狙う。
田中氏は「緑色半導体レーザーの新製品は光出力30mWで、HMDなどに対応する低出力品。今後、HUDやスマートプロジェクター、さらには大型のプロジェクターにも対応する中出力、高出力品を製品化し、ラインアップを整える」とする。
コスト面でも
HMD、HUDなどレーザー応用分野では、TFT液晶やLCOSなど他のプロジェクション技術とも競合になる。半導体レーザーは、他の技術に比較して、高コストという大きな課題も存在する。田中氏は「レーザービームスキャン方式は比較的新しい技術であり、量産規模が小さいために割高になっているだけ。量産規模が大きくなれば、コストは下がる。三原色の半導体レーザーは基板材料こそ違うが、製造プロセスの多くは共通であり、3色を扱うことで量産効果も発揮しやすくなる。コスト面でも三原色を扱うメリットはある」とした。
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