強力なセキュリティをハードウェアで実現:IoT社会を悪夢としないために(2/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)システムにおいて、セキュリティ技術が重要性を増している。インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは、産業向けIoTでハードウェアによる高度なセキュリティソリューションを提案する。
産業向けIoTのセキュリティの問題点と対応策
産業向けIoTにおけるセキュリティの問題についても、増加するハッキングの事例を交えながら、その問題点や対応策を紹介した。IoTシステムでは、大きく「デバイス」「ネットワーク」「サーバ」のレイヤーに分かれるという。Hanna氏は、「どのレイヤーでもハッカーから攻撃を受ける可能性があり、全てのレイヤーで防護策が必要である」と話す。
そこで有効なのが、「暗号鍵」を導入し、それを認証手続きの基点となる「Trust Anchors(トラストアンカー)」に格納することだという。こうすれば万一、PCのパスワードが第三者に盗まれても、VPNやファイアウォールを壊されることはないという。「特に、産業向けIoTシステムはハードウェアによるセキュリティ対策が重要である」と主張する。
しかも、要求されるセキュリティのレベルや属性は、レイヤーによって異なる。「各レイヤーで用いられる機器やシステムは、搭載されるCPUの性能やメモリ容量に応じたセキュリティ対策が求められている」という。同社は、組込みセキュリティソリューション「OPTIGA」ファミリーとして、「OPTIGA Trust」ファミリーや、TCG(トラステッドコンピューティンググループ)標準に準拠した「OPTIGA TPM」を用意している。
「各レイヤーに最適な製品を提供できるのが当社の強み。フリーサイズであらゆるIoTのレイヤーに対応できるセキュリティはない」とHanna氏は話す。これらの製品は制御システムのセキュリティ基準「ISA/IEC 62443-4-2」の要求事項を満たしているという。OPTIGA TPMは、Trust Anchorsに相当するICチップで、「よりセキュアなコンピューティング環境をリーズナブルな価格で実現する」ことが可能となる。
セキュリティ導入支援体制も強化
同社は、IoTシステムへのセキュリティ導入を促進するため、専門知識を持つ企業とパートナー契約(ISPN:Infineon Security Partner Network)を結び、顧客に対する技術支援を強化している。新たに今回、マクニカ テクスター カンパニーとパートナー契約を結んだ。2017年10月より、日本の顧客に対する技術サポートやシステム提案を始める予定だ。
ISPNは2015年にスタートした。現在世界で10社を上回るパートナー企業と契約している。セキュリティについて専門知識を持つシステムインテグレーターや、ソフトウェアライブラリの開発企業などがメンバーとなっている。IoTシステムに向けたセキュリティ事業に関して同社は、「ICベンダーという立場より、システムベンダーとしての取り組みに注力するため、ISPNとの連携を強化していく」考えである。
さらにHanna氏は、システムにアクセスする際のルール設定や運用上の意識改革も必要だと指摘する。「製造現場で作業者はそれぞれ個別のパスワードを利用しているか、操作を制限できる特権レベルが設定されているか、といったことも高いセキュリティを維持するために重要である」と指摘した。
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