日系企業の出資比率は過半超え
東芝は2017年9月28日、米投資会社のBainCapital(ベインキャピタル)を軸とする企業コンソーシアムで構成される買収目的会社Pangeaに対し、東芝メモリ(TMC)の全株式を譲渡する契約を締結したと発表した。売却額は2兆円になる見込み。2018年3月末までの売却完了を目指す。
東芝は、株式譲渡の実行までに、Pangeaに対して3505億円を再出資する予定だ。この他、BainCapitalは2120億円、HOYAは270億円、SK hynixは3950億円、さらにApple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capitalの米国4社が総額4155億円を、直接または間接的にPangeaに投資する。これに加え、Pangeaは金融機関から6000億円の借り入れを実行する予定だとしている。
株式譲渡後は、BainCapitalとTMCの経営陣を中心に、事業運営を行う。米国4企業各社は、TMCの普通株式あるいは議決権を取得する計画はない。さらに、東芝が再出資により保有することになるTMCの普通株式の一部に関わる議決権行使については、将来的にPangeaに資本参加を検討する意向を示している産業革新機構および日本政策投資銀行に対して、指図権を付与する。Pangeaにおける日系企業による出資比率は、東芝を含め過半を超えるとされ、今後も過半を維持する予定だという。
SK hynixとTMCの間には、少なくとも10年間はファイアウォールが設置され、SK hynixによるTMCの機密情報へのアクセスは制限される予定だ。SK hynixは、今回の融資の一部を株式に転換する権利を所有するが、今後10年間、TMCまたはPangeaの15%超の議決権を保有することはできない。さらに、株式に転換する権利を行使する際は、各国の競争法当局の承認が必要になる。
なお、TMCの売却については、米Western Digital(ウエスタンデジタル)の子会社SanDisk(サンディスク)が、東芝と共同で運営する3つのNAND型フラッシュメモリ合弁事業売却の差し止めを求めて国際仲裁裁判所に申し立てを行っているが、この差し止め請求が求められた場合であっても、今回のTMCの売却そのものが差し止められない限り、株式譲渡は履行されるとしている。
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