NICT、53.3Tbpsの光信号高速スイッチングに成功:光交換の世界記録を更新
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所は、光ファイバーで伝送されたパケット信号の経路を切り替える光交換技術において、従来の世界記録を4倍以上更新し、53.3Tbpsの光信号スイッチング実験に成功した。
1秒間に390万回以上の光信号スイッチングを達成
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所は2017年10月2日、光ファイバーで伝送されたパケット信号の経路を切り替える光交換技術において、従来の世界記録を4倍以上更新することになる53.3Tビット/秒(Tbps)の光信号スイッチング実験に成功したと発表した。この速度は、1秒間に非圧縮8K映像370チャンネル相当の光信号に対応可能なものだという。
NICTはこれまで、産学と連携し、1本の光ファイバーに7〜36個の光通信路(コア)を収めたマルチコア光ファイバーを開発し、伝送容量の向上を図ってきた。本実験では、次世代光ファイバーとして期待される、この大容量マルチコア光ファイバーに接続できる高速並列光スイッチシステムを新たに開発。この高速並列光スイッチシステムと、これまで開発したマルチコア光ファイバーを接続し、各コアの光信号一括切替えを実現した。1回の経路切替えに要する時間は80ナノ秒と高速で、1秒間に390万回以上のスイッチングを達成した。
従来の光スイッチシステムでは、光パケット信号の伝送にシングルコア光ファイバーを用いており、光パケット信号の宛先をスイッチコントローラーが判断して、逐次光スイッチが経路を切り替えていた。
今回開発したスイッチシステムは、上述した新開発の並列光スイッチと、これらのスイッチを同時に駆動させるスイッチコントローラーで構成される。これにより送られてきたコア多重光パケット信号の宛先をスイッチコントローラーが判断し、光スイッチを一括で同時に動作させることによって高速なスイッチングを実現した。
今回の成果は、光スイッチシステムが、大規模データセンターなどビッグデータが流通するネットワークスイッチとして適応可能であることを示したとNICTは述べる。これにより、ネットワーク装置の設置スペースの大幅な縮小や消費電力の低減につながることが期待される。
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