AI開発専門グループを立ち上げ
ARMは、新たに機械学習(マシンラーニング)グループを設立し、アクセラレーターコアや、CPU/GPUコア向けブロック、相互接続が可能なソフトウェアなどを開発していく予定だと発表した。ただし、どのような製品をいつごろ提供する予定なのかは、まだ不明である。
アナリストによると、ARMは、CadenceやCeva、Synopsysなどのライバル企業に対して、製品開発において約3年間の後れを取っているという。新興市場では既に、ソフトウェアが急速に進化し、大量のAI(人工知能)タスクが既存のARMコア上で動作している中、ARMはまだほんの初期段階にあるため、こうした状況に立ち向かっていく考えのようだ。
ARMは、マシンラーニンググループの社員数や予算など、詳細については明らかにしていない。同グループを率いるのは、ARMのフェローであるJem Davies氏だ。同氏はここ10年間、ARMのメディアブロック開発を担当していたことでよく知られている。ARMのIP(Intellectual Property)グループ担当プレジデントを務めるRene Haas氏は、「マシンラーニンググループは、ハードウェアおよびソフトウェアを手掛ける大規模な開発チームである」とシンプルに定義する。
Davies氏は、米国カリフォルニア州サンタクララで2017年10月24〜26日に開催されたARMの技術者向けイベント「ARM TechCon 2017」において、報道向けイベントの後にEE Timesが行った1対1の短いインタビューの中で、「われわれは、CPU、GPUや専用コアなどで機械学習を活用していく考えだ。しかし、今のところまだ何も発表していない」と述べている。
Davies氏は、ARMにおける自身の立場を“専用コンピューティング担当”と位置付けているという。正確に言うと、同氏は、マシンラーニンググループが数週間前に新設される以前に、コンピュータビジョン開発に注力していたという。
Davies氏とHaas氏はいずれも、「AIは現在のところ、まだ初期段階にあり、過剰に宣伝されている状況にある」と主張する。
Davies氏は、「作業負荷は、常に変化する。ニューラルネットワークは、単なる負荷の1つにすぎないが、次世代の主流技術と紹介する記事が増えているようだ」と述べ、専用ハードウェアのこれまでのさまざまな経緯について取り上げている。
「Javaでは、バイトコードが現れては消え、MP3デコードは、消費電力が1mW未満でも寿命がある。またMPEGは、汎用向けとして期待されたが、専用チップとしてしか使用できないというトレードオフが生じている」(同氏)
後れを取るARM
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupで主席アナリストを務めるLinley Gwennap氏は、「ARMは、機械学習用チップの開発競争において、他社に約3年間の後れを取っている」と述べている。
同じくThe Linley GroupのアナリストであるMike Demler氏は、「ARMは、CadenceやCeva、Synopsysに匹敵するような成果を何も上げていない。これらの企業は、それぞれ異なる手法で機械学習関連の取り組みを進めている」と述べる。同氏は最近、この件に関するレポートを完成させたばかりだという。
またDemler氏は、「NVIDIAは最近、同社のGPU『Xavier』に、MAC(Multiply-Accumulate)アレイを追加した」という。また、Intelは2016年に、Nervanaから取得した技術をベースとしたトレーニング向けのロードマップと、Movidiusの技術をベースとした推論向けのロードマップを発表している。しかしGwennap氏は、「Intelは、Nervanaの技術をベースとした半導体チップに関しては、まだ何も詳細を明らかにしていない」とも指摘している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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