意味不明の「時短」は、“ツンデレ政府”のSOSなのか:世界を「数字」で回してみよう(45) 働き方改革(4)(4/11 ページ)
「働き方改革」において、「生産性」に並ぶもう1つの“代表選手”が「時短」、つまり「労働時間の短縮」ではないでしょうか。長時間労働の問題は今に始まったことではありませんが、どうしても日本では「時短」がかなわないのです。それは、なぜなのでしょうか。
「時短」がこれほどまでに騒がれている理由
さて、ここからは「労働時間短縮(以下、時短という)」について、お話していきたいと思います。
「時短」が、なぜこれほどまでに騒がれているのか ――。 世間一般において最も分かりやすい理由は、「長時間労働が、労働者を殺すから」。このひと言に尽きます。
私、以前の連載で、「日本人の自殺」については相当ネチっこく調べました。その結果、日本人の自殺の要因の圧倒的多数が、「うつ病」であること、そしてうつ病の多くが、長時間労働から発生していることを知りました*)。
*)「死ぬ気になれば、何でもできる」のロジックが、うつ病には全く通用しないことは、「データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態」をご参照ください。
実際のところ、交通事故の死亡者(約4000人)より、うつ病による自殺者(江端ざっくり試算で7000人弱)の方が多いので、今や「『自動車』ではなく『会社』があなたを殺しに行く」といっても間違いではありません*)。
*)「『お前たちを殺しに行くのは、私たちだ』 ―― ということだよ」
一方、労働者を殺したって生き続けるのが会社です(事実、電通も、ウェザーニューズも、ワタミも、NHKも、無期限の業務停止命令を喰らった(そして倒産した)という話は聞きません)。
ですが、今回は「時短と自殺の関連」については言及しません。これについては、既に多くの議論がされていて、今さら私の出る幕はありません。私は、あくまでも「数字」に拘っていきたいと思います。
そもそも、「時短」とは国家、会社、そして私たちにとって、どういう意味があるのかを考えてみたいと思います。
私は今回、自腹を切って、平成29年度版の内閣府が発行している経済財政白書を購入しました*。
*)ネットでも読めますが、私は、本に書き込み(落書き)がしたかったから購入しました。
この本によれば、不思議なことに、どの国においても、時短を実施することで、生産率が上がっています。
しかし、これって、普通に考えれば「変」です。働く時間が減って生産性が上がるというのは、物理法則に反しています。
実は、この話は、前回の「生産性とは何か(私にはさっぱり分からん)*)」につながっていきます。「経済財政白書」の中で語られている生産性とは、実は「労働生産性(×資本生産性、×全要素生産性(TFP))」のことなのです。
*)関連記事:「誰も知らない「生産性向上」の正体 〜“人間抜き”でも経済は成長?」
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