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北大ら、性能を高める熱電材料の設計指針を示す:熱電変換出力因子は2〜6倍(2/2 ページ)
北海道大学と韓国の成均館大学校、産業技術総合研究所(産総研)らは、窒化ガリウム(GaN)の高い電子移動度を活用した半導体二次元電子ガスが、既存の熱電変換材料に比べて、2〜6倍の熱電変換出力因子を示すことを発見した。
極めて大きい出力因子
半導体二次元電子ガスにおける熱電変換出力因子の電子濃度依存性についても確認した。半導体二次元電子ガスの出力因子は最大で約9mWm-1K-2と極めて大きいことが分かった。一般的な半導体GaNに比べると10倍以上である。既に実用化されている熱電変換材料と比べても2〜6倍に相当するという。その理由として、半導体二次元電子ガスは、シート電子濃度を高めても大きな電子移動度を維持することができるため、と説明する。
左の上図が半導体二次元電子ガスの電子移動度(実線)とシート電子濃度(点線)のゲート電圧依存性、下図は半導体二次元電子ガスの熱電能のゲート電圧依存性。右は半導体二次元電子ガスと一般的な半導体窒化ガリウムの熱電変換出力因子(上図)および、電子移動度(下図) 出典:産総研
今回の研究で作製した窒化ガリウムの半導体二次元電子ガスは、「高価な単結晶基板上にしか作成できないことや、熱伝導率が大きいことから、研究成果がそのまま実用化につながるものではない」としながらも、「実用化が間近い熱電材料を高性能化するための設計指針になる」と研究グループではみている。
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