至宝の人工知能 〜問題に寄り添い、最適解をそっと教えてくれる:Over the AI ―― AIの向こう側に(17)(1/8 ページ)
先人たちにより開発され、磨かれてきた「至宝の最適化アルゴリズム」。本当はこれを軽々しく「AI」とは呼びたくな……い……という気持ちをぐっとこらえ、AI技術として解説します。「試験前の一夜漬け」「雪山遭難」「井戸堀り」の例を使って、説明していきます。繰り返しますが、最適化アルゴリズムを軽々しく「AI」という言葉で片付けたくはないんですよ、本当は。
今、ちまたをにぎわせているAI(人工知能)。しかしAIは、特に新しい話題ではなく、何十年も前から隆盛と衰退を繰り返してきたテーマなのです。にもかかわらず、その実態は曖昧なまま……。本連載では、AIの栄枯盛衰を見てきた著者が、AIについてたっぷりと検証していきます。果たして”AIの彼方(かなた)”には、中堅主任研究員が夢見るような”知能”があるのでしょうか――。⇒連載バックナンバー
数学=だまされないための便利な道具
私が学生のころ、ネパールに旅行中、現地の小料理屋で知りあった、私と同じ日本人のバックパッカーと料理をシェアしていた時の話です。
私はネパールの地ビールを楽しんでいましたが、彼はアルコールが飲めませんでした。さらに、そのバックパッカーの友人が、会食の終わりごろに、参加してきました。
会計の時、この3人の支払い(割り勘)は結構面倒なことになります。なにせ、アルコールを飲む人、飲まない人、食事の時間などを勘案して、全員がそこそこ納得できる金額にしなければならないからです。
もちろん異国を旅する日本人同士、どんな割り勘の金額に決まったところで、誰も文句は言わないでしょう(むしろ、多めに支払うことを申し出る人の方が多いのではないでしょうか)。
で、その時、私が何をしたか ―― レシートの金額を確認した後で、そのレシートの裏に、連立方程式を書き始めたのです。
私と旅人2人の支払金額を、それぞれ未知数x,y,zとして、アルコール有無とテーブル着席時間をざっくり係数とした、単純な線形方程式を書いただけですが、
――飲み会の割り勘に、連立方程式を使った人を初めて見た
と、2人の旅人は、相当驚いていたようです。
私は、こういう(飲み会などで使える)数字ネタをいくつか持っています。
その1:学生のころ、異性の友人に誘われてフラフラと、マルチ商法ビジネスを行うとある会社の集会に参加させられたことがあります。その集会で、『そのビジネスモデルは数回、階層を回しただけで、世界の全人口を越えて破綻するのですが、最下位層から開始する私は、どうやったら利益を得られるのですか?』と指摘して、事実上、その集会をぶち壊したことがありますし、
その2:ガス給湯器のセールスマンに対して、減価償却期間の計算結果を見せて、『では、御社の製品を購入することによって、この計算結果を越える金銭メリットを提示してください』と口にする前に、逃げていかれたことがありますし、
その3:太陽光パネル*)に関して、東京都の優遇措置の話を出してくるセールスに対して、『そんな優遇措置が、今後本当に30年間も続くと思います? 都民全員が、その優遇を受けたら、東京都は財政破綻しますよね』と疑問を口にしただけで、その会社は、二度とわが家を訪問してこなくなりました。
*)関連記事:「電力という不思議なインフラ(前編)〜太陽光発電だけで生きていけるか?〜」
まあ、つまり、何と言うか、
―― 数字や数学は、人にだまされない人生を過す上で、便利な道具
と言えそうです。
以前、わが国が「ゆとり教育」という試みを行った時、「二次方程式などは社会へ出て何の役にも立たないので、このようなものは追放すべきだ」という、奥方(作家)の意見を間に受けて、わが国の数学力の低下に最大限の貢献をした作家がいました*)。
*)上記のフレーズをコピペして検索すれば、その作家はすぐに分かりますので、御興味のある方はどうぞ。
『こういう奴がいるから、自分の借金の金利の計算もできないまま、自己破産していく人間が断たないのだ』と思ったことを、よく覚えています。
ところで、人工知能(AI)技術のベースとなる数学が、高校数学で十分であることは、意外に知られていません。
本当です。AI技術のサンプルプログラムを、暇さえあれば、片っぱしから試し続けているこの私が言うのですから、間違いありません。
かなり乱暴に言えば、数列、標準偏差、微分積分の考え方が分かっていれば十分で、数式の暗記すら不要(というか有害)です。考え方さえ分かっていれば、実際の数字の計算は、電卓、「エクセル」、パソコンにやらせれば良いのです。
しかし、これ(「考え方」の理解)が、多くの人にとって容易なことではないことも、私はよく分かっているつもりです*)。
*)私は「英語」で同じ境遇を痛感しています。「「海外で仕事をしたい」なんて一言も言っていない!」でご紹介している通り……。
そもそも、義務教育や高等教育の数学の授業って、この私ですら「ちょっとした拷問」だと感じるくらい、退屈ですから。
ですから、今ここに、私は高らかに声を上げて、数学教育の改革を提言し……(以下省略(参照:著者のブログ)
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