TSMC、南京の16nmプロセス工場建設を前倒し:中国での売上高の伸びを受け
TSMCが中国での生産活動を加速する。中国 南京に工場を建設する計画を前倒しにする予定だ。
中国工場の稼働を前倒し
TSMCは、中国 南京に2つ目となる工場を建設する計画を、当初の予定より前倒しすると発表した。半導体市場は現在、高い成長率で伸びており、その強力な需要に対応するためだとしている。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、同社のエコシステムサプライヤーの優れた業績を称えるイベント「サプライチェーンマネジメントフォーラム」において、基調講演に登壇し、「南京工場の稼働開始予定を、2018年6月に前倒ししたいと考えている」と述べている。
同社は2015年当時、「2018年後半には、南京工場で16nmプロセス技術による製造を開始できる予定だ」と発表していた。同社が30億米ドルを全額自社負担で建設する南京工場の生産能力は、12インチウエハー換算で月産2万枚だという。同社は建設費用として、約30億米ドルを投じる予定だ。
米国の市場調査会社であるIC Insightsのレポートによると、中国国内におけるファウンドリー事業をめぐる競争は、世界全体で増加し続ける需要に対する中国の割合が拡大するに伴い、今後も激化していく見込みだという。2017年における中国国内の専業ファウンドリーの売上高は、2016年比で16%増となる、70億米ドルに達するとみられている。また、中国のファウンドリー売上高の成長率は、世界全体の2倍以上になる見込みだ。
TSMCで中国の売上高が増加
IC Insightsによると、TSMCの中国におけるファウンドリー売上高は、2016年比で10%増となる約32億米ドルの見込みで、同売上高全体の約46%に達するという。
中国は現在、国内における半導体製造量を拡大すべく、懸命な取り組みを進めており、今後10年間で1600億米ドル以上も投じるとされている。中国政府は、国内に半導体産業を確立することで、国内の製造メーカーがAppleの「iPhone」や「iPad」などの製品を組み立てるために使用している半導体チップの輸入量を、相殺したい考えだ。
SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)などのさまざまなファウンドリーが、TSMCの他、GLOBALFOUNDRIESやUMCなどの比較的規模なライバル企業と競いながら、中国国内に工場を建設している。TSMCは南京工場において、16nmプロセス技術による製造開始に向けた準備を進めているが、SMICは現在まだ、28nmプロセス技術での製造に取り組んでいるさなかだ。
TSMCは、台湾の政府規制に従い、自社の最先端プロセス技術や、主要な製造ライン、重要な研究開発事業などに関しては、台湾国内に保持するとしている。同社は2018年に、台湾で7nmプロセスチップの製造を開始する予定だ。
「サプライチェーンマネジメントフォーラム」は、今回で第17回目となる年次イベントだ。同いベンドでTSMCは、特にTSMCの10nmプロセス技術による製造と、7nmプロセス以降の技術開発の進展に貢献した、トップクラスのサプライヤーの表彰を行った。機器や材料、パッケージング、各種サービスなどを手掛ける600社以上のサプライヤーが、世界各国から集まったという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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