変わる自動車業界、電子化の加速で競争は新たなステージへ:IHSアナリスト「未来展望」(7)(3/3 ページ)
ADAS(先進運転支援システム)や自動運転といったトレンドにより、自動車に搭載される半導体は増加の一途をたどるばかりだ。これは同時に、新規プレイヤーの参入や、自動車産業の構造の変化などをもたらしている。自動車業界での競争は今、どう変わりつつあるのか。
自動車産業界への影響
ティア1の売上高ランキングは、1位がContinental、2位がBoschだ。ティア1にはシステム全体を見ているという強みがあり、安全・安心機能を実現するうえで最も重要な役割を果たしている。グローバル調達力やECU(電子制御ユニット)のプラットフォーム化、ソフトウェアによるアップデートといった戦略面でも強い。
だが、新興勢力が参入してきたことで、自動車産業界は、従来のピラミッド型のサプライチェーンから、構造がフラット化しつつある(図4)。
ただし、まだその過渡期ではある。今後、自動運転とEV化の進展に伴い、自動車のシステムアーキテクチャは大きく変わっていくだろう。半導体メーカー(従来、新興勢力)とティア1の競争だけでなく、また新たなメーカーが参入してくることは容易に想像できる。特に、EV化における充電システムインフラ、5G(第5世代移動通信)といった通信インフラの変化も密接に絡んでくるので、それも考慮しなくてはならない。自動車業界は、安全・安心機能の実現に向けて、技術とコストのバランスを考えることも重要だ。
自動車業界では、自動運転、EV化の推進を皮切りに、自動車システムのアーキテクチャにおける変革がまさに今、始まっている。
筆者プロフィール
杉山和弘(すぎやま・かずひろ) / IHS Markit Technology シニアアナリスト
2000年から、大手電気・半導体メーカーでLSIの製品設計から事業戦略立案業務に従事。主に民生エレクトロニクス業界向け製品を扱い、IoTデバイスのネットワークからゲートウェイ〜クラウドを活用したビジネス推進を担当。
現職では、IHS Markit Technologyのシニアアナリストとして、市場分析/ビジネス分析を手掛ける。
【IHS Markit Technology】
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