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低周波数帯を使う5G、最後の砦は「波形をいじる」帯域幅の“無駄使い”をなくす(2/3 ページ)

5G(第5世代移動通信)向けの技術では、ミリ波の研究成果が目立つが、低周波数帯もLTEに引き続き重要になる。ただ、特に6GHz帯以下は逼迫(ひっぱく)していて、とにかく周波数がない。京都大学では、低周波数帯において周波数の利用効率を上げる新しい変調方式を開発している。

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LTE基地局を使った実証実験も成功

 さらに、原田研究室は実際のLTE基地局を使ってUTW-OFDMの実証実験も行った。京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻の教授である原田博司氏によれば、UTW-OFDMを開発したばかりのころは、シミュレーションと信号波形ジェネレーター、スペクトラムアナライザーを使って実験していたという。「だがこれだと単に実験のレベルにとどまってしまう。実際の基地局を使い、リアルタイムで処理できるかどうかを確かめる必要があった」(原田氏)


京都大学大学院 情報学研究科の原田博司教授

 実験では、日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)の計測/制御プラットフォームを使ってシステムを構築。原田氏は、日本NIが2017年10月に開催した「NI Days 2017」で、その事例を紹介している(関連記事:業界に強い影響を与える2018年の技術トレンド)。原田氏は日本NIのプラットフォームについて、「ちょうどよいメモリ量とインタフェースを備えていた」と述べる。

 構築したシステムでは、「LTE基地局から電波を飛ばす→サンプリング(デジタル変換)する→信号に「時間軸窓処理」をかけて信号波形を書き直す→アナログ変換する→LTE端末に向けて出力」という一連の処理が、わずか1マイクロ秒でできるという。原田氏は「1マイクロ秒でリアルタイムに処理できるというスピードには本当に驚いた」と述べる。「LTEでは1フレームが10マイクロ秒なので、処理時間が10マイクロ秒を超えてしまうと、LTE端末側が違うフレームだと認識してしまうからだ」(同氏)


実証実験を行った時のシステム構成図 出典:京都大学 原田研究室 (クリックで拡大)

 LTE基地局を使った、この実験によって、中心周波数2.5GHz、チャンネル帯域幅5MHzにおいて、CP-OFDMに比べて、UTW-OFDMは約20dB改善したという。


実証実験の結果 出典:京都大学 原田研究室

 なお、原田氏らが構築したこのシステムがあると、UWT-OFDMをはじめ、さまざまな種類の変調の波形を入力できるという。

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