ISSCC技術講演の2日目午後ハイライト(その2)、低ジッタの高周波PLL、全天周撮影のカプセル内視鏡など:福田昭のデバイス通信(131) 2月開催予定のISSCC 2018をプレビュー(7)(2/2 ページ)
前回に続き、「ISSCC 2018」2日目午後の技術講演から、見どころを紹介する。低消費電力の2.4GHz帯無線端末用PLL回路や、全天周をVGA解像度で撮影するカプセル内視鏡などが登場する。
全天周をVGA解像度で撮影するカプセル内視鏡
セッション17の「ヘルスケアと社会に向けた技術」では、さまざまな用途に向けた回路技術が続出する。始めに富士通九州システムサービスが招待講演で、農業および食品工業の課題を述べるとともに、センサー群による無線ネットワーク技術や人工知能技術、ロボット技術などによるソリューションを展望する(講演番号17.1)。
続いて韓国のKAISTが、4個のカメラを内蔵することで360度の全天周映像の撮影を可能にしたカプセル内視鏡システムを発表する(講演番号17.2)。撮影画像の解像度はVGA(640×480画素)、撮影速度は4フレーム/秒といずれも高い。カプセル内視鏡で撮影したデータは、無線によって被験者の人体を通過し、人体表面に貼り付けた受信アンテナ群で受け取る。データの転送速度は80Mビット/秒と高い。受信アンテナ群のレイアウトを再配置可能にするため、カプセル内視鏡の位置をcm未満の分解能でモニターする機能を開発した。
それからUniversity of California, San Diegoが、バイオ燃料電池で直接駆動が可能な血糖/乳酸センシング回路を報告する(講演番号17.3)。糖尿病患者が人体に埋め込み可能で、外部バッテリーが不要なセンサーシステムを目指して開発した。開発した回路はΔΣ変調方式のAD変換器や920MHzの無線送信器などで構成している。AD変換器の信号対雑音比は64dB。無線送信器のエネルギー消費は1ビット当たり30pJ。回路全体の電源電圧は0.3Vである。消費電力は180nWと極めて低い。
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