あなたは“上司”というだけで「パワハラ製造装置」になり得る:世界を「数字」で回してみよう(46) 働き方改革(5)(2/12 ページ)
今回のテーマは「労働環境」です。パワハラ、セクハラ、マタハラ……。こうしたハラスメントが起こる理由はなぜなのか。システム論を用いて考えてみました。さらに後半では、「職場のパフォーマンスが上がらないのは、上司と部下、どちらのせい?」という疑問に、シミュレーションで答えてみます。
ハラスメントが問題になっている理由
しかしながら、企業の目的とは、究極的には「金の匂い」そのものです。
資本主義社会における、企業の目的は「金の匂い」にあり、労働環境とは、「金の匂い」を最大化するためのインフラ整備のことです。
労働環境とは、"公"の価値観や、"個"の価値観など守るものなどではありません。
個人の人権(尊厳、健康)なども、建前としては『労働者の幸福』が前面に出されているものの、しょせん、それらは、労働者のパフォーマンスを最大化するための、単なる一つのパラメータに過ぎません。
労働環境における、セクハラ、マタハラ、パワハラなどが問題となっているのは、それが「悪」であるからでなく(いや、もちろん根源的な「悪」なのですが)、労働者を退職に追い込み、あるいは、労働者のパフォーマンスを劣化させ、企業の生産性を下げ、国家の税収を悪化させる ―― ということが、ようやく、政府や企業の幹部クラスに「数字で見えてきたから」なのです。
最も著名な数字が示していることの1つに、わが国は、今後、毎年1%(=100万人)のオーダーで、人間が消滅し続けていく、という冷徹な事実があります。
実際、既に多くの会社が人員不足を理由に、バタバタと倒産し始めています。現状の労働環境を放置し続ければ、日本国内の企業は、さらに加速的に消滅していくことになるのです。
労働環境=ハラスメント?
こんにちは、江端智一です。
今回は、政府が主導する「働き方改革」の項目の1つである、「労働環境」について考えていきたいと思います。
政府が、「働き方改革実行計画」の「労働環境」で掲げている課題は、(私が乱暴に理解した範囲では)以下の通りです。
『労働環境って、もっぱらSOHO(Small Office, Home Office:在宅勤務)のことを言うのかなぁ』と思って、図書館のサーチエンジンで「労働環境」をキーワードとして書籍を探しててみたら、(大げさではなく)ほとんどが「セクハラ」に関する書籍でした。
Googleでヒット数を調べてみたら{"労働環境"&"セクハラ"→19万件}、{"労働環境"&"パワハラ"→21万件}である一方で、{"労働環境"&"在宅勤務"→5万件}となっております。
それにもかかわらず、政府の実行計画書では、「ハラスメント対策」というのは、前面に出されていません(p.12に6行程度)。
しかし私は、労働環境の問題について「ハラスメント」や、冒頭に記載した「職場の士気向上」の話は切り離せないと考えましたので、今回は、これらも含めて検討することにしました。
さらに、後半では、「運動会」や「飲み会」などに逃げずに、会社の業績を上げるにはどうしたら良いか ―― というか、職場のパフォーマンスが上がらないのは、"上司"と"部下"、どっちが悪いか ―― の数値シミュレーション結果を示します。
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