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中国との距離縮めたいQualcomm、買収承認の行方NXPとの合併、EUの承認も完了(2/2 ページ)

QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、詳細な調査を理由に承認を長引かせていたEUからも承認が下りた。残るは中国だけだ。一部の観測筋は楽観視しているが、Qualcommには“弱み”もある。

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中国を“味方”につけるには?

 Ernst氏は、「ただし、Qualcommにとっては、NXP買収に対する中国を味方につける上で、検討すべき要素がいくつかある」と述べる。

 同氏は、「まず、Qualcommは、中国のイノベーション戦略を発展させていくためのツールの1つとして、競争政策の重要性を高めていくことを検討する必要がある」と述べ、中国で強大な力を持つ「IP Strategy Implementation Working Group」が最近発表した、「New Antitrust IP Guidelines」について言及している。

 2つ目は取引慣行だ。中国が現在展開している戦略は、「合併買収契約を阻止してはならない。ただし、影響力を持つ現地企業からの要望に対応すべく、調整を要求して、契約を遅延させる」というものであり、Qualcommはこれを理解する必要がある。中国のこのような見解は、2017年7月に開催されたMOFCOMの会合の中で、中国の大手モバイル通信事業者や半導体メーカーなどに向けて明文化されているという。

 3つ目は、確立された慣習を注視することである。外国企業はこれまで、承認を得るために、中国メーカーとの間で契約を締結しなければならなかった。

 4つ目は、企業論理を作用させるという点だ。先述したように、NXPには、コネクテッドカーや自動運転車に向けた半導体チップの分野に強みがある。Qualcomm/NXPが、中国のIntelligent & Connected Vehicles Programに対してどのように貢献することが可能なのかを明示する必要がある。中国は、それが自国の利益にもつながるということを確信すれば、買収の承認もスムーズに進む可能性がある。

 5つ目は、自制心を失ってはならないということだ。Ernst氏は、「IBMやIntelと比べると、Qualcommにとって、中国の“友人”になるまでの道のりはまだまだ遠い。しかし、その道の先に、中国から優遇を受ける資格を認められる可能性がある」と指摘する。

 同氏は、「結局のところ、これら5つの要素はまさに、Qualcommが中国の承認を受ける上で譲歩しなければならない点そのものだといえる。しかし、もし米国政府が、米国際貿易委員会(ITC:International Trade Commission)の提言する貿易制限を課すことになれば、全ての努力が無駄になる可能性がある」と警告する。

 同氏は、「このような最悪のケースともいえる貿易戦争のシナリオの場合、中国がQualcommに対してどのような追加要求をすることになるのか、私の知る情報筋は、誰もあえて予想しようとはしなかった」と述べる。

Qualcommの弱点

 一方で、Qualcommが、NXP買収をめぐって世界各国の独占禁止法当局から調査を受けたことにより、自らの位置付けを大きく低下させてしまったことは直視すべきだ。

 その典型例として挙げられるのが、韓国の公正取引委員会(KFTC)によって課された要求である。Ernst氏によると、韓国はQualcommに対し、以下の3つの条件を課しているという。

  • QualcommはNXPから、NFCをはじめとする各種システム特許に関する標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)を取得してはならない
  • Qualcommは、バンドル製品を販売したり、NXPのライセンス契約条件を変更してはならない
  • Qualcommは、競合メーカーに対し、NXP製品との連携を許可しなければならない

 Ernst氏によれば、MOFCOMとNDRCは、これらの条件に強い興味を持っているという。「MOFCOMとNDRCは、Qualcommにとって弱みになるカードを知っている。さらに、スマートフォン向けアプリケーションプロセッサ市場において、Qualcommに対する風当たりが非常に強いことも認識している」(同氏)

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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