半導体業界のM&A、2017年は大幅減少:大型案件は東芝メモリとCavium
IC Insightsによると、2017年における半導体業界のM&Aは過去2年に比べて大幅に減少したという。買収額が10億米ドルを超えたものは、東芝メモリとCaviumの2件だけだった。
2017年のM&Aは大幅減少に
米国の市場調査会社であるIC Insightsによると、半導体業界全体で行われた合併買収の合計金額は、2015年が1073億米ドル、2016年が998億米ドルだったのに対し、2017年は約277億米ドルにとどまったという。
2017年の合計金額は、減少幅が大きいものの、過去10年間を見てみると、最初の5年間の平均金額約126億米ドルと比べた場合、まだ2倍以上であることが分かる。
IC Insightsが発表した今回の数字には、Broadcomが2017年末に、Qualcommを1030億米ドルで買収するとした案件が含まれていない。この買収提案はQualcommの取締役会によって拒否されているが、その後プロキシーファイト(委任状争奪戦)が展開され、場合によってはBroadcomが形勢逆転を果たす可能性もあるようだ。もしこの買収が合意に達していたならば、2017年の半導体業界における合併買収の合計金額は過去最高に達していただろう。
現状をみると、2017年に発表された約20件の合併買収のうち、たった2件だけで、合計金額全体の87%を占めているという。1件は、プライベートエクイティであるBain Capitalを軸とする企業コンソーシアムが、東芝のメモリチップ事業を180億米ドルで買収する案件で、もう1件は、Marvell Technology GroupがCaviumを60億米ドルで買収する案件だ。IC Insightsは、「もしこれら2件の合併買収がなかったら、2017年全体の合計金額は、2010〜2014年の平均合計金額を下回っていただろう」と指摘する。
IC Insightsによると、買収金額が10億米ドルを超えた案件の数は、2015年が10件、2016年が7件だったのに対し、2017年は上記の東芝メモリとCaviumの2件だけだった。
IC Insightsは、「2017年の合併買収1件当たりの取引規模は、これら2件の大規模な案件によって大幅に引き上げられ、13億米ドルとなった。もしこの2件が存在しなければ、わずか1億8500万米ドル程度にとどまっていただろう。一方、2015年の平均金額は49億米ドルで、2016年は34億米ドルだった」と説明する。
合併買収が過熱する背景には、主に、半導体メーカーの時価総額が著しく上昇したことや、各社ともIoT(モノのインターネット)などの新しい半導体分野における優位性を確立すべく、より幅広い種類のポートフォリオを提供したいと考えるようになってきたことなどがある。こうした基本的な動向は現在も続いており、合併買収に向け準備を着々と整えている企業も確実に存在する。
しかし、過去2年間で、数多くの半導体メーカーがライバル企業に飲み込まれてしまったため、ここでいったん買収活動を休止して、買収済みの企業を消化吸収することにより、異なる企業を1つに統合していくための動きが広がるのではないかともみられている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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