流行ガジェットは見逃さない、新分野でも着実にシェア伸ばす中国勢:製品分解で探るアジアの新トレンド(25)(3/3 ページ)
エレクトロニクス業界の一大トレンドとなっているスマートスピーカー。多数の製品が登場する中、スマートスピーカーに搭載するチップで採用実績を着実に積んでいるのは、中国勢だ。
日本製の影薄く
一般に、スマートスピーカーは以下の5つの機能チップで構成される。(1)マイクロフォン、(2)Wi-Fi通信チップ、(3)音声処理用プロセッサまたはコントローラー、(4)操作用コントローラー、(5)スピーカーアンプである。
AmazonやGoogle、ソニーのスマートスピーカーでも、ほぼ同じ機能チップで構成されている。採用しているチップのメーカーは異なっても、既存チップの組み合わせである場合が多い*)。
*)スマートスピーカー向けに新規に開発されたチップを使うケースは少ない。スマートスピーカー専用のチップも存在するが、音声処理をより高度化するためにオーディオDSPを強化したものなどが出回り始めている。弊社ではいくつかを入手しチップ観察を行っている。
中国製チップで構成されるスマートスピーカーは、性能、音質、品質の点で決して競合品に引けを取らない。こうした製品で採用されたチップや構成(システム)は、市場での実績があるものとして、次々と類似製品に採用されていく。こうした中から“ゴールデン・アンサー”(巨大プラットフォーム)が生まれてくるのではないだろうか。
多くの調査会社などがスマートスピーカー市場の将来予測を行っていて、2020年代には年間1億台以上の巨大市場になるという予想も多い。各種家電やクルマなどに音声処理機能を搭載するケースも増えている。ロボティクスの分野なども同様だ。
こうした市場成長の中で、日本製チップの存在は極めて薄い。使えるチップは多いのだが、代表的なスマートスピーカーや、中国、台湾のスマートスピーカーには日本製チップがほとんど採用されていない。一方で、中国製チップを搭載したスマートスピーカーは全世界に向けて続々と出荷されていく。その間も、中国製チップは当然ながら進化を続けているのだ。
⇒「製品分解で探るアジアの新トレンド」連載バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ドンキ“衝撃の1万円台PC”、影の立役者は中国製チップだった
ドン・キホーテがプライベートブランドのPCとして発売した「MUGA ストイックPC」。本体価格で1万9800円という衝撃の価格を、なぜ実現できたのか。その裏には、実力を伴った中国製チップの存在があった。 - AI+5G+IoTの融合、具体的に見え始めたCES 2018
情報通信総合研究所は2018年1月31日、東京都内で「CES 2018」を振り返る勉強会を報道機関向けに行った。今回のCESは、5G(第5世代移動通信)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)が融合したサービスが、より具現化されて見え始めた展示会だったという。 - 正体不明のチップを解析して見えた、“オールChina”の時代
中国メーカーのドローンには、パッケージのロゴが削り取られた、一見すると“正体不明”のチップが搭載されていることも少なくない。だがパッケージだけに頼らず、チップを開封してみると、これまで見えなかったことも見えてくる。中国DJIのドローン「Phantom 4」に搭載されているチップを開封して見えてきたのは、“オールChina”の時代だった。 - 業界秩序が崩れ始めた2017年 ――座談会編1
毎回、調査会社IHS Markit Technologyのアナリストがエレクトロニクス産業の未来を予測する本連載。今回から数回にわたり、アナリスト5人による2018年を予測する座談会の模様を紹介する。まずは、2018年を占うために、2017年を振り返ってもらった。 - 中国との距離縮めたいQualcomm、買収承認の行方
QualcommによるNXP Semiconductorsの買収は、詳細な調査を理由に承認を長引かせていたEUからも承認が下りた。残るは中国だけだ。一部の観測筋は楽観視しているが、Qualcommには“弱み”もある。 - 中国の半導体政策は「無謀」、各国の警戒も強まる
半導体産業の強化に注力する中国だが、目標の到達には計画以上の時間が必要なようだ。資金力をものにM&Aを進めようとする姿勢に対し、警戒を強める国もある。【訂正】