ソニー、画素並列ADC搭載のイメージセンサーを開発:画像の歪みを解消
ソニーは「ISSCC 2018」で、画素並列A-D変換でグローバルシャッター機能を実現した、146万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーを開発したと発表した。
画素並列A-D変換のグローバルシャッター方式
ソニーは2018年2月13日、新しい方式のグローバルシャッター機能を搭載した裏面照射型CMOSイメージセンサーを開発したと発表した。有効画素数は146万画素(1632×896ピクセル)。米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「ISSCC 2018」(2018年2月11〜15日)で発表した。
今回発表した方式では、新たに開発した14ビットA-D変換器を全ての画素の下に配置し、全画素同時に露光したアナログ信号を、それぞれ即座にA-D変換(画素並列A-D変換)することで、グローバルシャッター機能を実現している。画素並列A-D変換した信号は、デジタルメモリで一時的に保持される。
A-D変換器とデジタルメモリは、積層型構造として下部のチップ(ロジック回路部)に配置する。上部チップ(CMOSイメージセンサー部)との各画素との接続には、ソニーの「Cu-Cu(カッパー・カッパー)接続」を採用した。Cu-Cu接続は、上部チップと下部チップを積層する際、Cuのパッド同士を接続することで、電気的導通を図る技術である。
現行のカラムA-D変換方式を用いたCMOSイメージセンサーでは、画素で光電変換したアナログ信号を行ごとにA-D変換して読み出す。このため、読み出し時間のずれによる画像の歪み(フォーカルプレーン歪み)が発生していた。新しい方式では、このフォーカルプレーン歪みを解消できるという。さらに、ソニーによれば、100万画素以上の裏面照射型CMOSイメージセンサーで、画素並列A-D変換器によるグローバルシャッター機能を実現したのは「業界初」(同社)とする。
なお、今回の方式では、従来のカラムA-D変換方式に比べて、約1000倍の数のA-D変換器を搭載することになる。それによって電流が増大するという課題があったが、サブスレッショルド領域で動作する、低電流動作が可能なA-D変換器を開発したことで、この課題を克服したという。
さらに、146万個のA-D変換器の動作に伴い、大量のデジタル信号を転送する必要があるが、それを実現するリピータ回路も新たに開発した。これによって、全画素のデジタル信号を高速に読み書きできるという。
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