NECとドコモ、5Gでセル間協調技術の検証実験へ:下りスループットが最大50%向上
NECとNTTドコモは共同で、5G(第5世代移動通信)システムにおいて、安定した通信品質を実現するセル間協調技術の実証実験を始めた。
電波干渉を防ぎ、下りスループットが最大50%も向上
NECは2018年2月、NTTドコモと共同で、5G(第5世代移動通信)システムにおいて、安定した通信品質を実現するセル間協調技術の実証実験を始めたと発表した。
実証実験に用いるNEC製の5Gシステム向け低SHF帯超多素子AAS(Active Antenna System)基地局システムは、集約基地局(CU)により、異なるリモート局(DU)に接続している端末機器の情報を複数DUで共有し、DU間の協調制御を行いながら指向性を持つ信号(ビーム)を形成する。
これによって、異なるDUの通信エリア境界付近に端末機器が存在しても、高品質の通信を行うことができるという。設置するセルの密度が高まる5Gでは、DU間の電波干渉を抑えることが通信品質を維持するために重要となる。
今回は、低SHF帯超多素子AAS基地局システムを用いたDU間の協調制御について、横須賀リサーチパーク(神奈川県横須賀市)やNEC玉川事業場(神奈川県川崎市)などで検証実験を行うことにした。
検証実験では、屋外環境で2台のDUをCUに接続。そして2台のDU通信エリア境界付近で複数の端末機器が通信している状態で、下りの通信品質を測定した。玉川事業場での実験結果によると、協調制御を行わない場合は、別のDUを意識せずにビームを形成するため、大きな干渉が発生して通信品質が低下した。協調制御を行うと、DU間で協調しながらビームを形成するため、電波干渉による通信劣化を防ぎ、下りスループットが最大50%も向上することを確認した。
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