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小容量と中容量の埋め込み不揮発性メモリ:福田昭のストレージ通信(91) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(4)(2/2 ページ)
埋め込み不揮発性メモリの記憶容量は、おおむね小容量、中容量、大容量、超大容量に分類される。今回は、小容量と中容量の埋め込み不揮発性メモリについて、用途や利点・欠点を解説する。
バイト単位のデータ書き換えを可能にする2層多結晶シリコン技術
記憶容量がやや増加した、中容量(medium capacity)の埋め込み不揮発性メモリ技術は、スマートカード(ICカード)用シリコンダイや携帯電話端末用の各種半導体などに使われている。ここで重要なのは、数ビット単位あるいはバイト単位のデータ書き換えが可能なことだ。2層多結晶シリコンのEEPROMに類似の不揮発性メモリ技術が、良い選択だといえる。
2層多結晶シリコン技術には当然ながら、利害得失がある。利点は、バイト単位のデータ書き換えが可能なこと、消費電力が比較的小さいこと、書き込み原理がファウラーノルドハイムトンネリング(FNトンネリング)なのでチャージポンプ回路のシリコン面積が相対的に小さく済むこと、などである。
欠点は、メモリセルがかなり大きいこと、CMOSロジックに追加の製造プロセスが必要なこと、テスト工程が増えること、などである。
自動車用(車載用)のマイコンやSoCなどが必要とする埋め込み不揮発性メモリの記憶容量はさらに大きい。その実現技術は次回以降にご説明しよう。
(次回に続く)
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