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東芝、SiC-MOSFETの抵抗を下げる新プロセス開発:チャネル領域の抵抗を約4割減
東芝は2017年9月19日、SiC-MOSFETのチャネル領域の抵抗を約40%低減する新しいプロセス技術を開発したと発表した。
窒素ガスを使用
東芝は2017年9月19日、SiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFET(以下、SiC-MOSFET)のチャネル領域の抵抗を約4割低減する新たなゲート絶縁膜プロセスを開発したと発表した。このプロセス技術を用いることで、素子全体の抵抗を最大で20%低減できる見込みとし、SiC-MOSFETデバイス使用時の電力損失の低減が期待できるという。
開発したプロセス技術は、チャネル領域を形成するゲート絶縁膜プロセス。開発した技術は、同プロセスで一般に使用される酸化窒素(NO、N2O)ガスに代えて、取り扱いが容易な窒素(N2)ガスを使用するもの。
ゲート絶縁膜の母材となる二酸化ケイ素(SiO2)をN2ガスで焼鈍する直前に、900℃未満の低いプロセス温度で酸素雰囲気に暴露するなどの独自処理を施し、反応性に乏しいN2ガスであっても十分な窒化反応を起こし、抵抗が増大する要因となるチャネル領域周辺の欠陥を修復することに成功した。
その上で、開発したプロセス技術では、一般的なNOガスを用いた場合と比較して、ゲート絶縁膜の信頼性を損なうことなくチャネル領域の抵抗が約40%低減されることも確認したとする。
東芝では、2020年以降の実用化を目指し、信頼性の向上を図る研究開発を行っていく方針。
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