STMicroelectronicsの埋め込みフラッシュメモリ技術(後編):福田昭のストレージ通信(94) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(7)
今回は、STMicroelectronicsの1トランジスタのNORフラッシュ(1T NOR eFlash)技術の製造プロセスと、フラッシュ内蔵車載用マイコンの開発史について紹介する。
CMOSプロセスに、フラッシュのプロセスをモジュールで追加
国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回から、講演者の所属企業である、STMicroelectronicsの埋め込みフラッシュメモリ技術に関する講演部分を前後編の2回に分けてご紹介している。前編では、同社が埋め込みフラッシュに採用した1トランジスタのNORフラッシュ(1T NOR eFlash)技術の利害得失と、採用の理由を説明した。今回、すなわち後編では製造プロセスと、フラッシュ内蔵車載用マイコンの開発史をご紹介しよう。
CMOSロジックの製造プロセスに埋め込みフラッシュメモリを組み込むには、追加のプロセスが必要となる。STMicroelectronicsが採用している「1T NOR eFlash」技術の場合は、フロントエンドプロセス(FEOL)の途中に、メモリセルトランジスタの絶縁膜形成プロセスやゲート電極形成プロセスなどが加わる。
180nmのCMOSロジック製造プロセス(左)と、埋め込みフラッシュメモリの追加プロセス(右)。埋め込みフラッシュの工程をモジュール化することで、生産工程の複雑化を抑えている (クリックで拡大) 出典:STMicroelectronics
1990年代前半には車載用マイコンがフラッシュメモリを内蔵
車載用マイコン(マイクロコントローラ)の埋め込みフラッシュメモリでは、STMicroelectronicsは25年を超える歴史がある。1990年代の前半にはすでに、256Kビットと当時としては大容量のフラッシュメモリを内蔵した車載用マイコンを開発していた。
その後、車載用マイコンが内蔵するフラッシュメモリは、動作周波数の向上と記憶容量の拡大を重ねていく。2001年には動作周波数が40MHz、記憶容量が256Kビットのフラッシュメモリを埋め込んだ車載用マイコンを開発した。2004年には動作周波数が64MHz〜150MHzに向上する。そして2007年にはフラッシュメモリの記憶容量が4Mビットに拡大する。2010年には動作周波数が最大300MHz、記憶容量が最大8Mビットと進化し、2013年には動作周波数が最大300MHz、記憶容量が最大16Mビット(2Mバイト)に達した。
混載するロジックの規模拡大も進む。2001年は40万ゲートだったのが、2004年には70万ゲート、2007年には150万ゲートと拡大した。2010年には700万ゲート、2013年には1600万ゲートに達する。車載用マイコンがどんどん大規模かつ複雑になっていったことが分かる。
(次回に続く)
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